先生からのメッセージ

高齢患者さんは十分なエネルギーと栄養摂取を心がけて

  • 医療法人社団三思会 東邦病院 糖尿病 ・リウマチ科 部長
Saio Yukie
齊尾 友希江先生

患者さんご自身の治療目標を設定することが大切

 関節リウマチ治療で大切なのは、患者さんが病気を受け入れ、ご自身の治療目標として「改善したらどのようなことがしたいか」を明確にすることです。症状が改善し当初の目標がクリアできたら、また新たな目標を立てて治療継続のモチベーションにしていただければと思います。

 当院では17職種からなるチームで関節リウマチ患者さんをケアしていきますが、患者さんには「あなたはひとりじゃない、皆で頑張っていきましょう」とお伝えしています。そして、治療目標の明確化をはじめ、不安・心配事などの相談、服薬指導などについてはリウマチケアナースが時間をかけて何度も問診を行っています。

齊尾 友希江先生

70 歳以降は体重を気にするより十分な栄養摂取を

 当院の関節リウマチ患者さん504人を調査したところ、65歳以上の患者さんが多く、高齢化がみられました。高齢の患者さんに知っていただきたいのが、「食事管理の考え方が変わる」ということです。すなわち、若いころは生活習慣病予防のために太り過ぎないことが大切ですが、70歳以降はサルコペニア予防のために肥満対策よりも栄養が不足しないことを優先してください。サルコペニアは栄養やエネルギーの不足により筋肉量が減少し、身体機能が低下した状態です。サルコペニアになると関節に負担がかかるだけでなく、転倒や骨折・寝たきりなどのリスクになります。特に関節リウマチ患者さんは太っている方は少ないので、筋肉量が減らないよう適正なエネルギーとたんぱく質をしっかり摂るようにしましょう。1日3回、ささみやマグロ、高野豆腐、納豆、紅鮭などたんぱく質の豊富な食品を摂るよう心がけてください。また高齢者は脂質をあまり摂りませんが、ココナッツオイルなどの中鎖脂肪酸はすぐにエネルギーに変換され筋肉で使われやすいので積極的に摂るようお勧めしています。また、うなぎやサンマ、干しシイタケなどのビタミンDを多く含む食品も勧められます。ビタミンDは自然免疫系を増強させて獲得免疫系を制御すると考えられ、風邪、インフルエンザ、肺炎など呼吸器感染症の予防が期待されます。そのうえ、カルシウムの吸収を促進してくれるので、骨粗鬆症の予防にもつながります。

ご家族や周りの理解が患者さんの勇気につながる

 関節リウマチになると、朝は手だけでなく体全体がこわばります。このこわばりの時間は、リウマチの活動性を反映しています。1日で一番辛い朝、患者さんは目覚めてもなかなか起きられません。しかし周囲に病気への理解がないと、「なまけ病」と受け止められてしまいがちです。以前、当院で関節リウマチの患者さんにアンケートをとったところ、「誰も理解者がいない」と答えた方が6%いました。患者さんにとって、辛い気持ちを共有する人がいることは重要ですし、一番身近な家族に理解してもらえたら病気に立ち向かう勇気が湧いてくることでしょう。患者さんの治癒力をできるだけ高める医療をご家族も巻き込んで提供していけたらと考えています。

齊尾 友希江先生
齊尾 友希江先生

齊尾 友希江

1992年岐阜大学医学部を卒業し、岐阜大学第三内科研修医となる。1993年岐阜赤十字病院内科に勤務。1999年より米国に滞在。2001年羽島市民病院内科勤務医となり、2017年医療法人社団三思会東邦病院糖尿病・リウマチ科医長に就任する。2018年より現職。

医療法人社団三思会 東邦病院

病床数:443床
所在地:群馬県みどり市笠懸町阿左美1155番地

取材:2024年
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