先生からのメッセージ

健康寿命の延伸を目標とした関節リウマチ治療

  • 埼玉川越リウマチ・膠原病内科クリニック 院長
Kondo Tsuneo
近藤 恒夫先生

前向きな姿勢で治療に臨むことが大切

 関節リウマチと診断された患者さんは、心理的な負担やストレスを感じやすい状況にあります。しかし、ストレスは病気の悪化要因になりますし、痛みの感受性を上げて痛みを増強させてしまうこともあります。関節リウマチの治療はこの20年で大きく進歩し、治療をきちんと行えば、制限なく日常生活が送れるようになってきています。ですから、患者さんには悲観的にならず前向きな姿勢で治療に臨んでいただきたいですし、医療者は患者さんが前向きになれるような診療を心がけることが大切と考えています。

更年期の関節症状は早めに専門医に相談を

 社会の高齢化に伴い、関節リウマチの発症年齢は上がっており、かつて30〜50歳とされていた発症年齢は、現在では40〜60歳が中心となっています。この疾患は女性に多く、40〜60歳は更年期に重なるため、関節症状の原因が関節リウマチなのか、更年期障害としての関節痛なのか、両方が合併しているケースもあり、区別が難しくなります。原因が異なれば治療も異なりますので、関節の痛みや違和感など気になる症状があれば早めにリウマチ専門医を受診ください。近年では、関節エコーやMRI(磁気共鳴画像)などの画像診断技術を活用し、これらを的確に鑑別することが可能となっています。

近藤 恒夫先生

薬剤の減量も考慮

 患者さんの高齢化により、関節リウマチを治すだけではなく、リスクを抑えて健康寿命を延ばすという観点からのアプローチも重要になってきています。

 例えば薬物治療では、これまでは寛解や低疾患活動性を達成した後も同じ治療を継続することが多かったのですが、最近では薬剤によるリスクを軽減させるため、治療の見直しが行われるようになりました。当院では、患者さんの病状が改善した場合、検査データ、関節所見、自覚症状などを総合的に評価し、慎重に減量を進め、副作用の低減に努めています。

手洗い、マスク、ワクチン接種で感染症予防を

 関節リウマチ患者さんにとって感染症対策は極めて重要です。特に、風邪、インフルエンザ、新型コロナウイルスなどの呼吸器感染症には注意が必要です。手洗いの徹底のほか、人混みや室内など、他者との距離が近い場所ではマスクを着用しましょう。帯状疱疹、肺炎球菌、インフルエンザ、RSウイルスなどに対してはワクチン接種も検討いただきたいと思います。新型コロナウイルスワクチンに関しては、個々の患者さんの状況に応じて接種を検討する必要がありますので、主治医と相談の上でご判断ください。

口腔内は清潔に。乾燥にも注意。

 関節リウマチの発症や増悪と歯周病には密接な関連があると言われます。日々の丁寧な歯磨きで口腔内はいつも清潔にしておきましょう。乾燥も歯周病のリスクを高めるため、適切な水分摂取を心がけたり、口渇を副作用とする薬剤、頻繁な会話、甘い飲み物など乾燥を引き起こす要因にも注意しましょう。歯科医による定期的なチェックと専門的なケアを受けることも大切です。

 関節リウマチは症状の変動が大きく、良好な時期は自立した生活が可能でも、症状が悪化すると周囲のサポートが必要になります。ご家族には患者さんの病状や疾患についてご理解いただき、必要なサポートについて公的サービスも含め事前に検討しておいていただきたいと思います。

近藤 恒夫先生
近藤 恒夫先生

近藤 恒夫

2005年埼玉医科大学医学部卒業。同年横浜労災病院初期研修。2007年埼玉医科大学総合医療センターリウマチ・膠原病内科助教。2010年同科非常勤医師。慶應義塾大学医学部リウマチ内科研究員。2011年埼玉医科大学大学院卒業。2012年埼玉医科大学総合医療センターリウマチ・膠原病内科助教。2016年同科講師。2017年 University of California San Diego(UCSD), the Division of Rheumatology留学。2018年埼玉医科大学総合医療センターリウマチ・膠原病内科講師(復職)。2024年埼玉川越リウマチ・膠原病内科クリニック開院。現在に至る。

埼玉川越リウマチ・膠原病内科クリニック

病床数:なし
所在地:埼玉県川越市脇田本町8-1 U_PLACE 6F MEDICITY

取材:2024年
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