先生からのメッセージ

早期からの包括的アプローチで病気の進行を効果的に抑制

  • 仁寿会東洋病院
    院長 リウマチ膠原病内科 呼吸器内科
Tani Kenji
谷 憲治先生

多職種で取り組む患者さんのケア

 当院では、チーム医療を重視し、医師、看護師、薬剤師、理学療法士、作業療法士、ソーシャルワーカーといった多職種の専門家が協力して患者さんのケアに取り組んでいます。多職種でのアプローチは、患者さんの身体的、精神的、社会的ニーズに包括的に対応するために不可欠です。

 特に関節リウマチの治療では、発症早期からの多職種による包括的アプローチが極めて重要です。薬物療法に加えて早期から理学療法および作業療法を含むリハビリテーションを導入することは、病気の進行をより効果的に抑制し、患者さんの機能維持と生活の質の向上に大きく貢献できることが研究によって示されています1)。早期介入の利点として、関節の変形や機能障害の予防、痛みと炎症の軽減、筋力と関節可動域の維持・改善が挙げられます。また、当院は東洋医学にも注力しており、薬剤師と連携しながら関節リウマチの痛み緩和に効果的とされる漢方薬を治療に取り入れています。漢方薬は飲みにくいことがあるため、生薬を紅茶のティーバッグのように加工することで服薬コンプライアンスの向上をはかっています。

患者さんの状態に応じたリハビリテーション

 リハビリテーションの内容は患者さんの状態に応じて異なります。重度の患者さん、特に寝たきりや車椅子を使用する方々には、ベッドに寝たままあるいは車椅子に座ったままでもできる筋力の維持や関節が固まることを防ぐ運動を行います。一方、動ける患者さんには、関節への負担の少ない全身運動として水中運動を推奨しています。水中では浮力により関節への負荷が軽減され、患者さんの体力に合わせて運動強度を調整しやすいという利点があります。

谷 憲治先生

服薬管理のポイントと感染症予防の重要性

 関節リウマチの薬物治療は、症状のコントロールと生活の質向上に欠かせません。

 抗リウマチ薬の中には飲み方が複雑なものもあり、飲み忘れ、発熱や咳があり休薬すべきか迷っているなど不安がある場合は、主治医に相談することが重要です。

 免疫抑制薬を使用している場合は感染症のリスクが高まるため、一般の方以上に予防策が必要です。そのため、帯状疱疹、肺炎球菌、インフルエンザなどのワクチン接種を積極的に推奨しています。また、手洗いを中心とした基本的な衛生習慣の徹底も重要です。

谷 憲治先生先生

ご家族の理解と支援の重要性

 患者さんのケアにおいてご家族の役割は重要です。患者さんの心に寄り添うことを基本としつつ、診察時には同席をする、関節リウマチ関連の市民公開講座の開催があれば患者さんと一緒に聴講し、病気への理解を深めていただければと思います。特に妊娠・出産などライフステージの重要な局面では、ご家族の協力が患者さんの大きな支えとなります。ご家族の適切な関与は、患者さんの治療アドヒアランスを高め、精神的な安定をもたらし、全体的な治療成果の向上につながります。

参考文献

  • 1)Combe B, et al. Ann Rheum Dis 2017; 76(6): 948-59.

谷 憲治先生先生

谷 憲治

1982年徳島大学医学部医学科卒業。同年同大学医学部付属病院第三内科医員。1983年高知市立市民病院呼吸器科医員。1988年徳島大学医学部附属病院第三内科助手。1991年徳島県立三好病院呼吸器科医長。1995年フレデリック米国国立癌研究所留学。1997年徳島大学医学部第三内科講師。2000年同大学同科助教授。2004年同大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部分子制御内科学分野助教授。2007年同大学同研究部地域医療学分野特任教授。2010年同大学同研究部総合診療医学分野特任教授。2015年同大学大学院医歯薬学研究部総合診療医学分野特任教授。2017年同大学病院総合診療部特任教授。2023年仁寿会東洋病院院長。現在に至る。

仁寿会東洋病院

病床数:50床
所在地:徳島県徳島市北島田町1丁目160-2

取材:2024年
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