先生からのメッセージ

手術は適切なタイミングで受けることが大切

  • 琉球大学病院 整形外科 講師
Azuma Chinatsu
東 千夏先生

患者さんに寄り添った診療を心がける

 沖縄県は地理的な特性から他県へのアクセスが容易ではないため、県内完結型の医療が求められます。当科でもその使命を果たすため、専門グループを編成し最高水準の医療を提供することを目指しています。日頃の診療では、患者さんに満足していただき、かつ、医師として適切な医療を行うために、患者さんに寄り添うことを心がけています。患者さんの話を聞き、病気や薬のことだけでなく患者さんが個人的に抱える悩みや不安も共有して、治療に前向きに取り組めるようサポートしています。

東 千夏先生

関節を温存する手術方法が普及

 近年の関節リウマチの薬物療法の進歩は目覚ましいものがありますが、その一方で関節変形や関節破壊が進行し、疼痛や歩行困難に悩んでいる患者さんも一定数存在します。変形や破壊が進行した関節を薬物治療で治すことは難しく、外科的な治療が必要となる場合があります。膝や股関節などでは人工関節に入れ替える手術が行われます。足指の関節では関節を切除する手術に代わり、最近では関節温存術が普及しています。小関節に滑膜炎が起こり変形を生じている手指関節では、滑膜切除術が行われますが、人工関節置換術や関節形成術を行うこともあります。

 手術を受けるタイミングは患者さんが日常生活に支障を来たすようになった頃と考えますが、症状や画像所見、日常生活動作(ADL)などを考慮しながら、病状が悪化しないうちに手術を検討することが重要です。動けなくなってから手術を受けると術後のリハビリテーションに長期間を要しますし、変形の進行や骨欠損が拡大すると手術が難しくなり、あまり良い結果を得られない可能性もあるからです。

痛みを伴う動作を避ける

 日常生活では関節を守る動作が重要です。基本的に痛みを伴う動作は避けることが大事です。重いものを持つ際には、ご家族や周りの方に手助けしてもらいましょう。また、関節の拘縮や筋力低下を防ぐために、長時間座ったり寝たりすることを避け簡単なストレッチや適度な運動を心掛けていただきたいと思います。

骨粗鬆症を予防するビタミンD

 関節リウマチは免疫系の異常により関節の炎症や腫れが起きる疾患です。この炎症が長期間続くと骨がダメージを受け、骨粗鬆症のリスクが高まります。骨粗鬆症になると骨が脆くなり、骨折しやすくなります。骨粗鬆症の予防には、まずバランスの良い食事をとることです。特にカルシウムやビタミンDを含む食品をとることが骨の健康につながります。日光浴も役立ちます。紫外線を浴びることでビタミンDの生成が促進されるからです。さらに、適度な運動も必要です。ウォーキングや片足立ちなど、身体を動かすことで骨の強化が図れます。

東 千夏先生

ご家族の理解と協力は患者さんの生活の質(QOL)を向上させる

 ご家族のサポートは患者さんにとって非常に重要です。妊娠を希望する患者さんにとって配偶者のサポートは欠かせませんし、高齢の患者さんにおいて服薬サポートはもちろん、日常生活のサポートがQOLを向上させます。さらに、体調不良や関節リウマチの薬の副作用が現れた場合、早急に医療機関を受診する必要がありますが、ご家族の理解があればよりスムーズに対処することができます。ご家族の理解と協力は患者さんのQOLを向上させる大切な要素です。

東 千夏先生

東 千夏

2000年琉球大学医学部卒業。同年同大学医学部附属病院医員。2007年琉球大学大学院医学研究科卒業。2012年新潟県立リウマチセンター。2014年琉球大学医学部附属病院助教。2015年同院講師。2022年琉球大学病院整形外科医局長。

琉球大学病院

病床数:600床
所在地:沖縄県中頭郡西原町上原207

取材:2023年
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