先生からのメッセージ

運動習慣とストレス対策で健康寿命を延伸

  • とりかい整形外科リウマチ科 院長
Torikai Eiji
鳥養 栄治先生

フレイルやサルコペニアを防ぐために運動や食事が大事

 関節リウマチ患者さんはフレイルやサルコペニアになりやすいと言われています。フレイルは虚弱な状態、サルコペニアは筋肉が減少した状態をいいますが、これらはともに日常生活での身体活動が少ないことによって起こります1)。関節リウマチ患者さんは、関節リウマチによる炎症が筋肉を弱らせたり、痛みのために運動量が減ってしまったりすることでフレイルやサルコペニアになりやすいのです。フレイルやサルコペニアになると、運動機能が低下し、将来要介護状態になる可能性が高いとされています2)。このため、適度な運動を毎日続けることが重要です。運動により関節や筋肉を動かすことは、関節の可動域を広げたり、筋肉の拘縮を予防することにもつながります。運動としては体操や散歩が勧められますが、過度に行うと、逆に不具合が生じることもありますので、無理をせずに行うのがポイントです。

 フレイルやサルコペニアを防ぐためには栄養も大事です。主食、主菜、副菜の揃ったバランスの良い食事を三食きちんと摂りましょう。偏った食事は関節リウマチにも悪影響を及ぼします3)

 また、関節を変形させないためには、関節を守る生活動作の工夫も必要です。重いものを持つことや、正座や長時間同じ姿勢を取ることは関節に負担をかけるので、できるだけ避けていただきたいと思います。

ストレスと上手に向き合い、乗り越えていく

 不安やストレスは関節リウマチの悪化の引き金となることがあります。不安やストレスが体力や免疫機能を低下させてしまうことがあるからです。毎日の気温の寒暖差、仕事、家事や育児などストレスは周りにたくさんありますが、ストレスと上手に向き合い、乗り越えていくことがとても大事になります。私は患者さんの不安感を軽減させるため、できるだけ明るい雰囲気で診察を進めるよう心がけています。

鳥養 栄治先生

ご家族の方も病気について正しい知識を

 関節リウマチにおいてご家族が患者さんの病気を理解し、サポートしていくことは極めて重要です。仕事や家事について、ご家族に理解いただくことが少し難しい場面もあるかもしれませんが、そういったことが患者さんご自身のストレスになり、病気に悪影響を及ぼさないよう、ご家族の方には病気について正しい知識を持ち、患者さんが調子の悪い時こそ助けになっていただきたいと思います。

 私は、関節リウマチ患者さんが、そうでない人と同じ健康長寿を全うできることを目指して治療を行っています。近年の治療の進歩から、そのような時代に近づいていると感じています。

鳥養 栄治先生

参考文献

  • 1)Cruz-Jentoft AJ, et al.: Age Ageing. 2010;39(4): 412-423.

  • 2)Beaudart C, et al.: PLoS One. 2017;12(1): e0169548.

  • 3)Tedeschi SK, et al.: Arthritis Care Res (Hoboken). 2017;69(12): 1920-1925.

鳥養 栄治先生

鳥養 栄治

2000年浜松医科大学医学部医学科卒業。同年同大整形外科学教室入局・同附属病院整形外科勤務。2002年藤枝市立総合病院整形外科勤務。2006年21世紀COEプログラム特別研究員。2008年University CollegeLondon Hospital, UK, Wrightington Hospital, UK留学。2009年JA静岡厚生連遠州病院整形外科勤務。2015年浜松医科大学整形外科・同附属病院整形外科勤務。2017年磐田市立総合病院リウマチ科部長。2022年より現職。

とりかい整形外科リウマチ科

病床数:なし
所在地:静岡県磐田市二之宮406-1

取材:2023年
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