先生からのメッセージ

適切な運動と関節を守る生活動作の工夫が大切

  • 金沢医科大学 リハビリテーション医学科教授
Matsushita Isao
松下 功先生

適度な運動が健康寿命を延ばす

 関節リウマチの活動期には安静が必要ですが、安静にしすぎると筋力低下や関節の拘縮、身体機能の低下が生じます。したがって、炎症を抑えながら、適度な運動を行うことが大切です。一般的に激しい運動は不向きであり、スクワットや片足立ちなどの軽いトレーニングやジョギング、散歩などが勧められます。高齢の患者さんにとって適度な運動は、フレイル(加齢により心身が虚弱になること)の予防にもなります。私は患者さんには「適度な運動をすると、長く健康でいられますよ」といつも話しています。

 なお、庭いじりや畑仕事など好きなことや趣味の作業を行う場合は長時間になりがちで、手首や膝などに負荷がかかり、関節を痛めることがあります。長時間の作業は避け、適度に休息を取るようにしましょう。

松下 功先生

生活動作の工夫で関節を守る

 関節を守るためには生活動作の工夫が大事です。関節を守る生活動作は関節の破壊の進行を抑制し、痛みを減らす助けになります。

 例えば、痛んだ手首で無理に重い物を持つと痛みが増し変形しやすくなりますが、肩にかけて持つことで痛みが悪化せず、変形の進行も防止されます。椅子から立ち上がる際には、椅子の座面に厚めのクッションを置くと膝の曲がりが緩やかになって膝の負担が減り、立ち上がりやすくなります。

 一方、精神的ストレスは、関節リウマチの症状を悪化させることがあります。人間関係などはできるだけ悩みすぎないようにすることが肝要です。反対に、リラックスしている状態は症状の安定につながります。ご自身なりにリラックスを心がけてください。

松下 功先生

骨折を予防し、関節破壊の進行を防ぐ

 関節リウマチでは、骨粗鬆症の合併が多く、四肢や脊椎の骨折リスクが高くなります。疾患活動性が低下しているときでも骨密度を測り、必要に応じて骨粗鬆症の治療を受けましょう。一度骨折が起こると、身体機能の低下が起こり、ときに寝たきりとなることもあります。現在、骨粗鬆症の治療薬は多数あり、軽度から重度の病態に合わせた選択肢があります。これらを組み合わせて適切に治療し、骨折を防いでください。

 患者さんの中には「治療は先生にお任せします」という方がいますが、患者さんには治療の内容を理解し、納得して治療を受けていただきたいと思います。その方が関節リウマチの治療がうまくいきます。とくに処方された薬については、その薬がどんな薬なのか、使う目的や意味、副作用について知っておくことが重要です。

 治療には患者さんと医師の協力が重要であり、お互いが積極的に関与することで効果的な治療が行われるのだと思います。

松下 功先生

松下 功

1987年富山医科薬科大学(現富山大学)医学部医学科卒業。同年同大医学部整形外科学研修医。1993年富山赤十字病院整形外科勤務。1997年富山県高志(現富山県立)リハビリテーション病院整形外科勤務。2002年富山医科薬科大学(現富山大学)整形外科助手。2005年富山大学整形外科・リハビリテーション部講師。2013年同大附属病院整形外科・リハビリテーション部准教授。2015年同院整形外科・リハビリテーション部診療教授。2020年より現職。

金沢医科大学病院

病床数:817床
所在地:石川県河北郡内灘町大学1-1

取材:2023年
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