先生からのメッセージ

合併症や併存症の進展予防には日頃の疾患活動性コントロールが重要

  • 名古屋大学医学部附属病院 整形外科 病院助教
Terabe Kenya
寺部 健哉先生

きちんと関節リウマチ治療を行い発症前の生活を目指す

 名古屋大学の整形外科には7つの班があり、私はその中のリウマチ班に所属しています。リウマチ班はリウマチ性疾患を総合的に診療できる医師を育成しており、当科では患者さんが通常の生活ができるような治療を行うことを理念とし、関節リウマチ初期の薬物療法から関節に変形が生じた患者さんの手術療法に至るまでトータルに診療しています。

 患者さんの中には関節リウマチだから運動ができない、旅行ができないなどと自ら行動を制限している方がおられます。しかし、薬物治療が進歩した現在では発症早期であれば、関節リウマチになる前の生活の状態に近づけることは十分に可能です。これにより関節破壊が高度に進行する方も減少しております。発症後時間が経過した方でもしっかりとした疾患活動性の制御によりクオリティ・オブ・ライフ(QOL)の改善が期待できます。以上からどんな関節リウマチ患者さんにおいても日々の治療が重要です。

寺部 健哉先生

日頃から疾患活動性を良好に管理することで、合併症の進展も抑制

 関節リウマチで関節に炎症が起きている時には、肺や腎臓、血管などにも炎症が起き、関連臓器に障害が起こる可能性があります。特に高齢になるとさまざまな合併症や併存症が出てきます。例えば、多くの患者さんが合併する肺疾患の中でも特に重篤とされる間質性肺炎は、関節リウマチの疾患活動性がコントロール不良であると進行しやすいことが知られています。また関節リウマチがある患者さんでは、そうでない患者さんに比べ腎機能が低下しやすいことにも注意が必要です。まずは普段の関節リウマチ治療を大切にしていただき、関節リウマチの疾患活動性を良好にコントロールしましょう。そうすれば将来の関節破壊を防ぐだけでなく、肺、腎臓、心臓などの臓器の合併症、併存症の進行も抑制することが可能です。それと同時に、合併症などの早期発見のため、通常の健康診断やがん検診などはしっかり受けておいていただければと思います。

寺部 健哉先生

治療をしっかりと続け、日々の運動を心がけることが大切

 現在、関節リウマチの治療は、関節リウマチになる前と同様に生活できるまでに進歩してきています。しかし、関節リウマチを完治させる方法はまだ確立しておらず、治療は続けていく必要があります。

 また、病院で行う治療だけでなく、患者さんご自身で日頃からウォーキングなどで体を動かしていただくことも重要です。運動で気分も良くなりますし、筋力もついて痛みが取れる場合もあります。

 関節リウマチは長く付き合わなくてはならない病気ですので、良い時も悪い時もあるかと思いますが、痛みなどは我慢せず、困った時こそ主治医にご相談いただければと思います。

寺部 健哉先生

寺部 健哉

1997年愛知医科大学医学部医学科に入学、2003年豊橋市民病院研修医となる。2005年同院整形外科、2008年袋井市立袋井市民病院整形外科を経て、2011年名古屋大学大学院医学系研究科博士課程機能構築医学専攻に入学。2014年同大学医学部附属病院整形外科医員を務め、2015年East Carolina University postdoctoral fellowとなる。2017年独立行政法人名古屋医療センター整形外科医員を経て2019年名古屋大学医学部附属病院救急部病院助教、2022年同院整形外科病院助教となり現在に至る。

名古屋大学医学部附属病院

病床数:1,080床
所在地:名古屋市昭和区鶴舞町65番地

取材:2023年
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