先生からのメッセージ

関節リウマチの治療効果を高めるには禁煙・歯周病ケア・感染予防が不可欠

  • 大館市立総合病院 副診療局長(消化器・血液・腫瘍内科)
Ogasawara Hitoshi
小笠原 仁先生

地域の実情を踏まえ、患者さんのQOL 向上に取り組む

 当院が位置する秋田県北部は、高齢化と過疎化が加速している地域です。過疎化が進む地域は専門医が少なく、関節リウマチに重要な早期発見・早期治療が難しいのが課題です。そこで当院では、近隣のクリニックに「関節の痛みを訴える患者さんがいたら積極的に紹介してください」とお願いしています。このような連携は、関節リウマチを早期に発見し、適切な治療につなげ、重症化予防をはかる上で大変有用です。このように地域の実情を踏まえつつ、患者さんが健康時と変わらない日常生活を送れるようにすることを目標に診療に取り組んでいます。

小笠原 仁先生

喫煙は関節リウマチを悪化させる

 関節リウマチの治療効果を高めるには、患者さんの完全禁煙が不可欠です。長年にわたる喫煙は関節の破壊をより進行させることが報告されていますが1)、禁煙によって関節破壊のスピードを緩和できる可能性があります。また、受動喫煙も同様に関節リウマチの症状を悪化させますので2)、患者さん本人だけでなくご家族にも禁煙していただきたいと思います。実際に、患者さんの配偶者が喫煙者であるケースは多く「奥さん(旦那さん)の健康を考えるなら、タバコを止めることを強くおすすめします」と必ず伝えています。

気をつけたい歯周病と感染症

 近年、関節リウマチの要因の一つとして歯周病が注目されています。歯周病を放置することにより、関節リウマチが悪化することが報告されています3)。口の中を清潔に保ち、定期的に歯科検診を受けるなど、歯周病の予防や治療を行うことは関節リウマチにも好影響を与えると考えられます。歯周病を治療することで、症状が改善するケースも少なくありません。

 感染症の予防も大切です。特にリンパ球数が少ないとウイルス感染症にかかりやすくなりますので、定期的に採血検査を受けてリンパ球数を確認してください。個人でできる感染症対策としては、マスクの着用、手洗い、うがい、人混みを避けることなどが挙げられます。長時間密集するような行事への参加は感染リスクが高くなるため、できるだけ避けていただきたいと思います。

小笠原 仁先生

治療費は将来の寝たきり防止のための“先行投資”

 関節リウマチの治療は長期にわたって継続しなければなりません。現在は生物学的製剤などのおかげで、多くの患者さんが治療を続けながら支障の少ない日常生活を送られています。その一方で、生物学的製剤は高価なため、治療を躊躇したり、途中でやめてしまう患者さんも少なからずおられます。しかし、治療を継続しなければ病気は進行し、生活に支障を来したり、寝たきりになって高額な介護費用を長く支払わなければならなくなるリスクが生じます。治療費は将来の寝たきり防止のための“先行投資”であると考え、可能な限り早期から効果的な治療を受けていただきたいと思います。治療費に関しては、高額療養費制度などの支援制度もありますので、主治医にご相談ください。

参考文献

  • 1)Mattey D, et al.: Arthritis Rheum. 2002; 46(3): 640-646.

  • 2)Zhang X, et al.: Clin Rheumatol. 2023; 52(3): 663-672.

  • 3)Brewer R, et al.: Sci Transl Med. 2023; 15(684). DOI: 10.1126/scitranslmed.abq8476

小笠原 仁先生

小笠原 仁

1986年日本大学医学部卒業。同年より弘前大学医学部第一内科及び関連施設に勤務。1995年大館市立総合病院第二内科副部長。1999年同院同科部長。2006年同院外来化学療法室長兼務。(2013年より「第二内科」が「消化器・血液・腫瘍内科」に改称」)2014年同院副診療局長。現在に至る。

大館市立総合病院

病床数:443床
所在地:秋田県大館市豊町3番1号

取材:2024年
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