先生からのメッセージ

早期治療、感染予防、適度な運動、ご家族の協力が大切

  • 日本海総合病院 腎臓・膠原病内科 部長
Okuyama Ayumi
奥山 あゆみ先生

高齢の患者さんでは早期に進行をしっかり抑える治療が大切

 近年、高齢の関節リウマチ患者さんが増えています。特に当院周辺のように過疎化が進む地域では高齢者のみの世帯や独居の高齢者も多いので、病気の進行により日常生活が困難になったり、歩けなくなって通院ができなくなるといった事態にならないよう早期からしっかり治療することが大事だと考えています。

感染症と転倒にご注意を

 関節リウマチは免疫が過剰になる病気ですので、免疫を抑える治療が行われます。その場合、必要な免疫も抑制されますので感染症にご注意ください。日常的な手洗いの励行はもちろん、人混みや不特定多数の人が集まる場所へ出かける際にはマスクの着用をお勧めします。マスクはご自身の感染を防ぐだけでなく、他者に感染を広げるリスクも軽減します。感染症予防にはワクチン接種も有効です。ワクチン接種は任意ですが、ご自分を守る有効な選択肢の一つと考えていただければと思います。

 また、関節リウマチでは関節の痛みにより動きが制限されるため、手足の筋肉が衰えて歩行が難しくなったり、バランス能力が低下して転倒しやすくなることがあります。高齢の患者さんやステロイド治療を受けている患者さんは骨粗鬆症を合併していることも多く、転倒すると骨折する可能性も高いです。高齢患者さんの骨折は、寝たきりにつながるので特に注意が必要です。

奥山 あゆみ先生

足腰の衰えを防ぎ関節を守る適度な運動

 しかし、感染症や転倒に気をつけるあまり外出を避けたり動かなくなってしまうと、骨や筋肉がさらに弱ったり、体重が増えて関節に負荷をかけたりしてしまいます。デイサービスを利用するなど外出の機会を増やしたり、適度な運動を行っていただきたいと思います。

 足腰の衰えを防ぎ、関節の可動域を保つための手軽な運動としては、ラジオ体操やストレッチなどが挙げられます。水泳も関節への負担が少ないので、関節リウマチの患者さんにはお勧めです。ただし、やり過ぎは体への負担になりますので、無理のない範囲で行いましょう。運動した翌日に関節が腫れる、痛みが強くなる、疲れて動けないなどがあればやり過ぎと考えて運動量を調整してください。

奥山 あゆみ先生

体調不良を感じたら遠慮せず主治医に連絡

 発熱や風邪症状、血圧の変動など通常と異なる身体の変調があった場合は、遠慮なく主治医に連絡して指示を仰いでください。特に血圧低下には注意が必要で、腎機能が低下している人では、低血圧により腎臓への血流量が減少し、腎機能の悪化や薬剤の副作用が現れやすくなります。

 関節リウマチの治療を円滑に進めていく上では、ご家族の協力も重要です。重い荷物を運ぶなど関節に負担のかかる作業はできるだけ手伝っていただきたいと思います。また、夏場は水分の摂取不足で脱水を起こしやすくなったり、体内の薬物濃度が高くなり副作用のリスクが上がりますので、水分を摂るようお声がけをお願いします。また、時々で結構ですので診察に一緒に来ていただき、病気や患者さんの病状について理解を深めたり、患者さんの日常生活の状況をお話しいただけるとありがたいです。

奥山 あゆみ先生

奥山 あゆみ

2004年埼玉医科大学医学部卒業。同年同大総合医療センター初期研修医。2006年同センターリウマチ・膠原病内科。2018年日本海総合病院腎臓・膠原病内科。現在に至る。

日本海総合病院

病床数:528床
所在地:山形県酒田市あきほ町30番地

取材:2023年
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