先生からのメッセージ

炎症は身体の「火事」。火元が小さなうちに消すことが大切

  • 高知大学医学部附属病院第二内科(内分泌代謝・腎臓膠原病内科)講師
Taniguchi Yoshinori
谷口 義典先生

関節の炎症は速やかに鎮め、早期に寛解に持ち込む

 関節リウマチは、関節に炎症という「火事」が起こる病気です。病気の「活動性」が高い状態、つまり火が燃え続けている状態では、炎症性物質が体内を駆け巡っており、やがて火元である関節が破壊されたり、他の臓器に延焼する可能性があります。そして、血管に火が付けば動脈硬化が進行し、脳梗塞や心筋梗塞といった心血管病につながる恐れもあります。これが関節リウマチは全身病と言われる理由です。患者さんの中には妊娠を希望される方もおられますが、関節リウマチの活動性が高い状態での妊娠・出産は避けるべきです。

 家から出火したら、たとえ小火でも放っておく人はいないでしょう。身体も同じだと考え、関節の炎症が広がらないよう早期からしっかり治療し、炎症が治まった「寛解」と呼ばれる状態に持ち込むことが大切です。

谷口 義典先生

自分にとって幸せな医療を考える

 今医療者に求められているのは、患者さんの幸せを医療で追求していくことと考えています。幸せの形は一人ひとり異なりますから、患者さんにはまず自分はどう生きたいのかを考えていただきたいと思います。「細く長く」、「太く短く」など、それぞれ人生観があるでしょう。患者さんが心から喜べる医療を実現するためには、私たち医療者は病気を治すだけでなく、そうした患者さんの思いを理解しなければなりません。日ごろから気になることや悩みなどがあれば、些細なことでも構いませんので医師や病院スタッフにお話しください。医療者との信頼関係の中でともに治療に取り組み、心から笑顔になれる医療を受けていただければと願っています。

谷口 義典先生

思いはご家族、そして医療者とも共有を

 生き方や幸せについては病気に罹ってからではなく、日ごろからご家庭で話し合っておくとなお良いと思います。ご家族から「患者をどうサポートしたら良いのか」と尋ねられることがありますが、日ごろからお互いの事情や思いを理解し合っていれば、患者さんにとってどんなサポートが必要なのか、ご家族にどんなサポートができるのかは自ずと見えてくるのではないでしょうか。私たち医療者側ももちろん全力でサポートしますので、情報や思いを共有していただき、医療者と患者さん、そしてご家族が「ワンチーム」で治療に取り組めればと思っています。

谷口 義典先生

谷口 義典

2002年高知大学医学部附属病院第二内科に入局。2003年倉敷成人病センターリウマチ膠原病センター/内科、2005年高知赤十字病院内科、2006年高知大学医学部附属病院第二内科・同大学大学院を経て、2010年米国ワシントン大学(シアトル)に留学する。2012年高知大学医学部附属病院第二内科助教・病棟医長となる。2016年高知大学医学部附属病院第二内科・リウマチセンター助教、2018年同病院同科助教・医局長、2019年同病院第二内科(内分泌代謝・腎臓膠原病内科)学内講師・医局長を経て、2022年同病院同科講師・医局長に就任し、現在に至る。

高知大学医学部附属病院

病床数:613床
所在地:高知県南国市岡豊町小蓮

取材:2023年
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