先生からのメッセージ

これからは、患者さんと医療者が一緒に治療を考える時代

  • 奈良県立医科大学 地域医療学講座 教授
Akai Yasuhiro
赤井 靖宏先生

関節リウマチ治療は全身を診る必要がある

 私たち専門医は、専門とする診療科の視点で臓器ごとに症状を捉えてしまいがちです。しかし、関節リウマチは全身の病気ですので、当院では、関連する医療者・スタッフが患者さんを総合的な視点から検討し治療していくことを大切にしています。とくに関節リウマチ診療の基幹病院である当院は、合併症を抱えた関節リウマチ患者さんが多い傾向にあります。こうした患者さんについては整形外科、腎臓内科、呼吸器内科、総合診療科と定期的にカンファレンスを行い、科を超えて連携しながら診療に当たっています。

赤井 靖宏先生

患者さん自身が積極的に関わることが、より良い治療につながる

 患者さんにとって病気は、長い人生の中での1つの大きな出来事ですから、私たちは患者さんの人生に対する考え方を踏まえた治療を行っていきたいと思っています。そのためには、患者さんは、治療を医師だけに任せず、自分の意思を生活状況や経済状況なども含めて医療者に伝え、治療に積極的に関わることが大切です。また、日頃気になっていることや考えていることも、私たちに遠慮なくお話しください。楽しいこと、ストレスに感じたこと、仕事の悩み、家庭での出来事など、患者さんが些細と思われるようなことも患者さんに寄り添った治療を工夫するヒントになります。

ご家族も患者さんと来院し、何でも主治医に相談を

 関節リウマチは生物学的製剤などの新薬の登場で、病気のない人と同じように生活可能な「寛解」という状態にまで回復する方が多くなってきています。しかし、患者さんのご家族の中には、最近の治療の進歩をご存じではなく、関節リウマチにかかると関節が変形し、日常生活が不自由になるものと思い込んでいらっしゃる方もおられます。ご家族もぜひ患者さんと一緒に来院いただき、医療者から正しい情報を得ていただければと思います。生活上で不自由がある場合も、主治医にご相談いただければ、自助具や装具など楽に生活できるさまざまな工夫をご紹介できます。また、高齢の患者さんでは、痛みなどを訴えてもご家族や周りの方が「歳だから仕方ない」と放置してしまうケースを時折見受けます。高齢の患者さんでも適切な治療を行うことはとても重要ですので、タイミングを逃さず受診するよう周りの方が促していただきたいと思います。

赤井 靖宏先生
赤井 靖宏先生

赤井 靖宏

1989年奈良県立医科大学を卒業し、1995年同大学大学院を修了する。1996年米国トマスジェファーソン医科大学附属病院内科レジデント、2001年米国ペンシルバニア大学腎臓・電解質・高血圧内科臨床フェローを経て、2003年奈良県立医科大学第1内科助手となる。2005年同大学第1内科学内講師、2008年同大学卒後臨床研修センター准教授、2014年同大学糖尿病学講座准教授・副センター長を歴任し、同年同大学卒後臨床研修センターセンター長に就任する。2015年同大学地域医療学講座教授を兼任し、現在に至る。

奈良県立医科大学附属病院

病床数:992床
所在地:奈良県橿原市四条町840番地

取材:2023年
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