先生からのメッセージ

安全性と有効性を追求しつつ、患者さんの望むゴールを目指す

  • 河北総合病院 副院長
Okai Takahiro
岡井 隆広先生

患者さんとの共同意思決定を大切に

 当院のリウマチ・膠原病科では関節リウマチ治療において、治療目標の決定、安全性、有効性、経済的側面の4つを重視し、情報提供を行いながら患者さんとの共同意思決定を大切にして治療方針を決定しています。特に近年増加している高齢患者さんの多くは合併症を抱えているため、安全性を最優先とし、症状の改善と感染症やその他の疾患とのリスクのバランスを取りながら治療を進めていきます。治療目標は年齢や病状、患者さんの希望によって異なるため、治療方針は自ずと個別化されていきます。

岡井 隆広先生

年1回はがん検診を

 関節リウマチ患者さんは関節リウマチ以外の疾患にもかかる可能性があるにもかかわらず、定期的に主治医に診てもらっているから大丈夫とご自身の健康管理について安心感を持ちすぎる傾向があります。しかし関節リウマチ関連の検査には、がんなどの検査は含まれていないため年1回のがん検診が推奨されます。また、日頃から血圧や体重、食欲や胃腸の状態などにも気を配っていただき、気になることがあったら関節リウマチには関係ないと思われるようなことでも遠慮なく主治医に相談することが全身の健康管理の上で大切です。

運動と感染対策の重要性

 関節リウマチ患者さんにおいて適度な運動は重要です。できれば1日に5,000歩~1万歩を歩くことが望ましいですが、次の日に痛みが出ない範囲で無理なく続けられる運動を行うことが肝要です。感染対策も重要で、ワクチン接種のほか、インフルエンザやコロナウイルスなどが流行している際には人ごみを避けるなどの注意が必要です。口腔内ケアも特に誤嚥のリスクがある方には大切です。また、関節リウマチの患者さんの約2割に見られる1)シェーグレン症候群では、唾液の分泌が不足し、口腔内の状態が悪くなります。歯周病が増えると関節リウマチの悪化リスクが高まることも分かっていますので2)、定期的に歯科を受診し、口腔の状態をチェックしてもらいましょう。

岡井 隆広先生

高齢者のためのアドバンス・ケア・プランニング

 治療に対するご家族の関与は治療サポート上でも望まれますが、患者さん本人の希望を尊重し、共同で意思決定を行う上でも重要です。80~90歳を超えた高齢の患者さんにはアドバンス・ケア・プランニング(ACP)と呼ばれるアプローチがあります。これは、将来の病状の変化に備えて、人生の終末期を見据え、最期の治療方針や生活環境など患者さんの希望に沿った計画を立てるものです。難しいテーマですが、予期せぬ状況においても冷静に対応できるよう、ご家族と患者さんとが医療者とともに、じっくりと話し合っておくことが大切です。

参考文献

  • 1)厚生労働省 難病情報センター シェーグレン症候群(指定難病53)

    https://www.nanbyou.or.jp/entry/111(2023年8月閲覧)
  • 2)Hashimoto M, et al.: PLoS One. 2015;10(4): e0122121.

岡井 隆広先生

岡井 隆広

1987年旭川医科大学卒業。同年河北総合病院内科研修医。1990年杏林大学医学部第一内科(腎・膠原病)専攻医。1991年河北総合病院内科。1993年同院院内透析室室長。1999年同院内科部長。2003年同院診療部長。2004年筑波大学医学専門学群非常勤講師(兼任)。2006年河北総合病院分院院長。2017年同院サテライトクリニック院長。2019年河北医療財団健康生活支援統括センター長、河北総合病院副院長(兼任)。

河北総合病院

病床数:331床
所在地:東京都杉並区阿佐ヶ谷北1-7-3

取材:2023年
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