先生からのメッセージ

医師と患者さんとが意思を共有し、最適な治療決定を

  • 医療法人 井上病院 群馬リウマチクリニック 院長
Kuroiwa Takashi
黒岩 卓先生

患者さん本位のベストな治療を目指して

 難病だと考えられていた関節リウマチにおいて、この20年の治療の進歩は著しいものがあります。治療選択肢も増え、ベストを尽くして治療を行えば改善が期待できるようになりました。そこで重要なのは、医師と患者さんとが一緒に最適な治療を選択していくことです。これは欧州リウマチ学会のガイドライン1)で推奨されているシェアード・ディシジョン・メイキング(shared decisionmaking)と呼ばれる新しい概念で、治療を行うにあたっては患者さんと医師とが意思を共有して決定していくことが大前提とされています。当院では、このほか日米の最新ガイドライン2,3)も踏まえつつ、患者さん本位の治療となるよう、患者さんのご希望、家族関係や経済状況、さらには将来のビジョンも含めて、患者さんそれぞれに最適な治療が行えるよう十分に話し合うことを心がけています。

黒岩 卓先生

お薬は自己判断で減らさず、まずは医師にご相談を

 抗リウマチ薬の服用で症状が落ち着いている患者さんは大勢いらっしゃいますが、中には、自己判断でお薬を飲まなかったために悪化してしまう方も見受けられます。その場合、医師は処方したお薬をきちんと飲んでいるのに悪化したと考えてしまいます。お薬を飲まなかったり飲み忘れたりした場合は、きちんと医師に伝えていただくようお願いします。副作用があるなど服薬が難しい場合も、まずは医師にご相談ください。

家族や周りの方は、患者さんの様子に配慮を

 関節リウマチの痛みは我慢せず、周囲に訴えてください。痛みは外から見えないため、痛いということを伝えない限り周囲の方は気づきません。「少し家事を手伝ってもらえたらありがたいけど、それがなかなか家族に言えない」とおっしゃる女性患者さんは多いです。患者さんは積極的にご家族に病状を伝え、そして周りの方々は患者さんの痛みを理解し、サポートしていただければと思います。

 高齢化が進む日本では、高齢の関節リウマチ患者さんも増えてきています。特に後期高齢者となる75歳以降では、腎機能をはじめ様々な臓器の機能が低下し、合併症も増える傾向にあります。感染症を起こした場合にも重症化しやすくなりますので、注意深い治療が必要になります。ご家族や周りの方々にも患者さんの病状の変化などに注意を払っていただくようお願いしたいと思います。

黒岩 卓先生

参考文献

  • 1)Smolen JS, et al. :Ann Rheum Dis. 2023; 82(1): 3-18.

  • 2)一般社団法人 日本リウマチ学会 編. 関節リウマチ診療ガイドライン2020. 診断と治療社. 2021.

  • 3)Fraenkel L, et al.: Arthritis Care Res (Hoboken). 2021; 73(7): 924-939.

黒岩 卓先生

黒岩 卓

1991年群馬大学医学部を卒業し、群馬大学医学部附属病院第三内科研修医となる。1997年米国国立衛生研究所(NIH)客員研究員、2000年群馬大学医学部附属病院腎臓リウマチ内科助教、2009年同病院同科講師を経て、2011年自治医科大学附属さいたま医療センターアレルギー・リウマチ科准教授に就任する。2013年医療法人井上病院 群馬リウマチクリニック副院長、2015年より現職。

群馬リウマチクリニック

病床数:なし
所在地:群馬県高崎市井野町1040-1

取材:2023年
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