先生からのメッセージ

機能障害が徐々に進んできたら手術も念頭に

  • 新座志木中央総合病院 院長
Hayashi Junji
林 淳慈先生

発症から2 年以内の適切な治療が重要

 関節リウマチは従来、発症後長い経過をたどって病気が進行すると考えられてきました。しかし、近年の研究で、発症から2年以内に急速に症状が進行することがわかり、発症初期から適切な治療を行うことが重要と考えられるようになりました。

 治療では、はじめにアンカードラッグ(中心的薬剤)と呼ばれるメトトレキサートなどの抗リウマチ薬が用いられます。治療開始後6か月の時点で病状がコントロールできていない場合には、生物学的製剤やJAK阻害薬と呼ばれる強力な薬剤を考慮します。これらの薬剤は高額なこともあり、治療を躊躇する方もおられますが、関節破壊は進行してしまうと元に戻りません。タイミングを逃さず前向きに検討していただければと思います。

 発症から2年以内の時期は、関節リウマチ患者さんは病気に対する不安などストレスがたまりがちです。ご家族の方には患者さんの気持ちをご理解いただき、しっかりと支えていただければと思います。また、患者さんを孤立させることなく、社会全体で見守ることも重要です。

林 淳慈先生

機能障害によりできないことがあるなら主治医に相談を

 薬物治療と同様に、手術も適切な時期になされる必要があります。しかし、機能障害が進行している患者さんに手術の話をしても「今のままでいいです」と、不自由があるにもかかわらず我慢しているケースがみられます。これまでできていたことができないなど困っていることがあるならば、我慢せず主治医に相談してみてください。例えば、手指の人工関節置換手術を行えば、ある程度の大きさのものは握れるようになります。また、膝の人工関節置換手術を行えば、走ることは難しくても、卓球やボーリング、ゴルフ程度のスポーツを楽しむことは可能になります。

 関節の変形や機能障害が高度になれば、手術後の成績も低くなる傾向にあります。ただし、患者さんの気が進まないと、術後のリハビリテーションもうまくいきません。「手術をしたい」というご本人の意向が最も大事になります。

林 淳慈先生

年1 回のがん検診を

 患者さんの中には、関節リウマチで毎月診察しているからがん検診は受けなくても大丈夫と思っている方がいます。しかし、例えば胃がんや大腸がんはバリウム検査や内視鏡検査など関節リウマチの血液検査やX線の検査とは別の検査が必要となります。年1回のがん検診あるいは人間ドックは是非受けていただきたいと思います。

林 淳慈先生

林 淳慈

1986年東京医科大学卒業。同年昭和大学藤が丘病院整形外科入局。1993年新座志木中央総合病院整形外科部長、昭和大学藤が丘病院整形外科兼任講師。2003年新座志木中央総合病院副院長/人工関節リウマチセンター長。2013年から現職。
日本リウマチ学会専門医・指導医、日本整形外科学会専門医・指導医、日本整形外科学会脊椎脊髄病医、日本整形外科学会リウマチ医、日本リウマチ財団認定リウマチ登録医、Infection control doctor、日本人工関節学会認定医。

新座志木中央総合病院

病床数:402床
所在地:埼玉県新座市東北1丁目7-2

取材:2023年
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