先生からのメッセージ

運動などのリハビリや感染予防、口腔ケアなどが大切

  • 杏林大学医学部 腎臓・リウマチ膠原病内科学 准教授
Kishimoto Mitsumasa
岸本 暢將先生

薬の必要性を理解し、主体的に治療に取り組んでもらう

 高齢の関節リウマチ患者さんの増加が注目されていますが、実際は患者さんの約半数近くが40歳代後半から60歳 代前半の現役世代です。したがって、多くの患者さんは仕事を休んだり、子供の世話や親の介護を誰かに頼むなど、 何かしらの犠牲を払いながら外来を受診しています。私は、こうした苦労をされている患者さん一人ひとりの気持ち に応える診療を心がけています。また、関節リウマチは放置すれば関節が破壊されていきますが、患者さんが薬剤の 必要性を理解し納得した上で主体的に治療に取り組んでもらわなくては十分な効果は得られません。そこで、患者さ んと病気や治療法の情報を共有し、一緒に治療を決定するようにしています。

大腿四頭筋(太もも)を鍛えることがポイント

 関節リウマチの治療は薬物療法のほか、運動などのリハビリテーションも重要です。関節リウマチの活動性が落ち着いているときには、関節や筋肉を動かして運動機能の維持や関節の保護に努めましょう。

 とくに太腿の前側に位置する身体の中で最も大きな筋肉である大腿四頭筋を鍛えましょう。ウオーキングやストレッチ、ラジオ体操、階段の昇り降りなどがおすすめです。大腿四頭筋は膝関節の伸展機能を司っていますので、弱まると膝に体重負荷が集中し膝痛の原因にもなります。いずれの運動も主治医と相談しながら、継続して行うことが重要です。

岸本 暢將先生

各種ワクチンを活用し、感染症予防に努める

 関節リウマチ患者さんの多くには免疫を抑制する作用のある薬が使われています。免疫が低下すると、感染症にかかりやすくなり、重症化もしやすくなるため、感染予防が大切です。手洗いやうがい、マスク着用などのほかワクチン接種も感染予防対策の1つです。インフルエンザや肺炎球菌、新型コロナウイルス、帯状疱疹などのワクチンは、これらに感染したとしても発症が抑えられたり、発症しても重症化を避けられるなどの効果があります。

口腔ケアと禁煙を心がける

 歯周病があると体内で炎症が生じ、リウマチの発症や症状の悪化と関連するとも言われています。また、関節リウマチ患者さんは骨粗鬆症の薬を処方されることがありますが、骨粗鬆症の薬の一種である吸収抑制薬の中には、歯周病や口腔内の衛生不良があると顎骨壊死のリスクがあるものがあります。毎日の丁寧な歯磨きはもちろん、年に数回は歯科でデンタルクリーニングや歯周病のチェックを受けるなど口腔ケアを心がけましょう。喫煙も関節リウマチの発症や悪化の要因であり、治療薬の効果を低下させますので、禁煙していただきたいと思います。口腔ケアや禁煙は感染症の予防にもつながります。

 関節リウマチは、身体的な負担だけでなく、精神的な負担も伴います。ご家族や周囲の方は患者さんの気持ちに寄り添い、密なコミュニケーションをとって欲しいと思います。LINEなどSNSを活用するものよいでしょう。

岸本 暢將先生
岸本 暢將先生

岸本 暢將

1998年北里大学医学部医学科卒業。同年沖縄県立中部病院研修医(内科)。2000年在沖縄米軍海軍病院インターン。2001年ハワイ大学内科レジデント。2004年ニューヨーク大学リウマチ膠原病科フェロー。2006年亀田総合病院リウマチ膠原病内科医長。2009年聖路加国際病院リウマチ膠原病センター副医長。2012年同病院医長。2019年より現職。

杏林大学医学部付属病院

病床数:1,153床
所在地:東京都三鷹市新川6-20-2

取材:2023年
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