先生からのメッセージ

手術はタイミングを逃さずに

  • 小牧市民病院 整形外科 統括部長
Yamada Kunio
山田邦雄先生

薬物治療の恩恵を受けられない患者さんが一定数存在

 近年の関節リウマチの薬物療法の進歩は目覚ましく、生物学的製剤やJAK阻害薬が使用可能となり、その関節破壊抑制効果は非常に優れています。その恩恵もあり、関節リウマチに対する人工関節手術件数は減少してきています。その一方で、何らかの理由で適切な薬物療法を受けられなかった、あるいは薬物療法を受けても効果がなかったため、関節破壊と変形が進行し、疼痛や歩行困難で苦しんでいる患者さんも一定数いらっしゃいます。そういった患者さんでは、人工関節置換術により関節機能を再建することが必要です。

山田邦雄先生

人工関節置換術も進歩

 膝および股関節の人工関節置換術は手術成績が安定しており、関節リウマチ診療ガイドライン1)において最も推奨されている手術です。近年ではナビゲーションやロボットなどのコンピューター支援手術が普及しつつあり、より正確で安全な手術に進歩しています。また、関節リウマチの患者さんでは、術後手術した関節の痛みがとれるだけでなく、他の関節症状や血液所見が改善することもあります。手術を受けた患者さんからは「ずっとためらっていたけれども、もっと早く手術すればよかった」という感想をいただくことも多いです。

歩行不能になる前に手術を

 患者さんの中には「全く歩けなくなったら手術を受けます」と言われる方もいらっしゃいます。しかし、歩行不能になった頃には、変形の進行、骨質の悪化、骨欠損の拡大などにより手術自体が難しくなり、結果も芳しくないことが多くなります。また、筋力やバランス感覚が低下し、術後のリハビリにも長期間を要します。より良い結果を得るには、手術のタイミングを逃さないことが大切です。

 我々整形外科のリウマチ専門医は薬物療法だけでなく、必要な場合は手術療法を組み合わせて、患者さんが痛みのない普通の生活を取り戻すことを目標に治療を行っています。

山田邦雄先生

術後は感染に注意し、定期的に検診を

 人工関節置換術の最も厄介な術後合併症は感染です。手術を受けた関節リウマチの患者さんは普段から体調管理に気をつけて、他の臓器の感染症に罹らないように注意してください。感染で最も多い症状は痛みなので、人工関節が痛みだしたら、できるだけ早く受診してください。また、高齢化や骨粗鬆症の合併のため、人工関節周囲で骨折するケースが増えています。転倒しないよう十分に注意し、骨粗鬆症があれば治療を受けてください。足の指の変形がある患者さんは毎日入浴して足全体を清潔に保つことも大事です。足の指や足の裏の胼胝(たこ)の傷から細菌が侵入し、人工関節が感染することもあるからです。

 人工関節は手術を受けたら終わりではなく、定期的な検査が必要です。最低でも年1回はX線検査などの検診を受けていただきたいと思います。

参考文献

  • 1)一般社団法人 日本リウマチ学会 編. 関節リウマチ診療ガイドライン2020. 診断と治療社. 2021.

山田邦雄先生

山田 邦雄

1984年名古屋市立大学医学部卒業後、1985年同大学医学部整形外科教室入局。1992年小牧市民病院整形外科医員。2000年日本リウマチ財団海外派遣研修医として米国にて臨床研修。2004年同院整形外科部長、名古屋市立大学医学部臨床教授併任。2019年より現職。

小牧市民病院

病床数:520床
所在地:愛知県小牧市常普請1-20

取材:2022年
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