先生からのメッセージ

自らの病状を理解することが適切な治療への第一歩

  • 東京都立病院機構 東京都立多摩総合医療センター
  • リウマチ膠原病科 部長
Shimada Kota
島田浩太先生

医師と患者が話し合って決める治療方針

 私が医師になった25年程前とは異なり、今は良いお薬が数多く開発され、関節リウマチの治療は目覚ましく進歩しています。しかし治療は長期にわたる場合が多いので、患者さんが自分らしい生活を送る中で治療を続けられることが大切です。そのためには、患者さんと医師とがよく話し合い、認識を共有しながら治療方針を決めていくことが重要になります。これはShared Decision Making (シェアード・ディシジョン・メイキング:協働意思決定)と呼ばれ、ヨーロッパではガイドラインでも推奨されています。医師が患者さんに一方的に「この治療をします」と伝える診療はもう昔の話になっているのです。

 関節リウマチの患者さんには、まずご自身の病状に興味を持っていただきたいと考えています。治療方針に関する話し合いの土台として、患者さんにはご自身の関節にいま何が起こっているのかを理解しておいていただく必要があるからです。

島田浩太先生

自らの病状を理解して治療に臨む

 関節リウマチの病状と治療について理解するには、疾患そのものの状態と痛みの関係を知ることが大事です。関節がまだ破壊されていない段階であれば、炎症をしっかり抑えて病気自体の進行を止めることが、痛みを抑えることにつながります。炎症を抑えるには冒頭申し上げた通り治療効果の高いお薬が色々とあります。しかし関節が既に破壊されて軟骨が減ったり骨が削れたりしてしまっている方では、炎症が治まっても痛みが残ることがあります。この場合の痛みに対しては、痛み止めの使用や、場合によっては人工関節置換術などの手術療法を検討することになります。

 このように、関節リウマチの痛みへの対応は病状によって異なりますが、ご自身の病状が分かっていれば、今なぜこの治療を行うのか、どうしてこのお薬を飲まなくてはいけないのかなど、納得して治療を続けていただけると思います。また、お薬を飲み忘れても、それを医師に隠す必要はありません。患者さんがお薬をどの程度飲んでいらっしゃるのかということも医師にとって大切な情報です。本当のことを話していただくことが適切な治療につながります。主治医に話しづらい場合には、看護師さんや受付の方など、話しやすい方に伝えていただければよいと思います。

関節リウマチ特有の合併症にも注意

 関節リウマチに合併症があることも知っておいていただくとよいでしょう。例えば、間質性肺炎という肺の合併症では、空咳が続いたり、息切れがみられます。こうした症状があれば医師に伝えるようにしましょう。骨粗しょう症も関節リウマチに多い合併症です。特に痛みもないため気付かないうちに骨密度が低下してしまい、転倒などで骨折してはじめて気が付く方も多いので、ご自分から医師に「私の骨密度はどうでしょうか」と尋ねていただいてもよいと思います。

 なお、関節リウマチの専門医には関節リウマチに関することや合併症など関連疾患について相談し、高血圧症などその他の病気についてはかかりつけ医にご相談いただくことをお勧めします。すべてを関節リウマチの専門医に相談しようとすると関節リウマチ自体の治療が遅れてしまうことも考えられます。それぞれの医師と上手に付き合っていただければと思います。

島田浩太先生
島田浩太先生

島田 浩太

1997年東京大学医学部医学科を卒業。2004年東京大学大学院医学系研究科医学博士課程を修了し、国立病院機構相模原病院 リウマチ科・臨床研究センターリウマチ性疾患研究部に所属。2010年東京都立多摩総合医療センター リウマチ膠原病科医長、2017年には東京都保健医療公社 多摩南部地域病院に半年間出向し内科医長として同院にリウマチ膠原病科を立ち上げる。2020年 同センター リウマチ膠原病科部長、2022年 独法化により東京都立病院機構 東京都立多摩総合医療センター リウマチ膠原病科部長となり、現在に至る。

東京都立病院機構 東京都立多摩総合医療センター

病床数:789床
所在地:東京都府中市武蔵台2-8-29

取材:2022年
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