先生からのメッセージ
- 筑波大学医学医療系膠原病リウマチアレルギー内科学 教授
患者さん一人ひとりから学び、他科とも連携して治療に取り組む
関節リウマチ診療の進歩により、患者さんの生活の質は目覚ましく改善してきています。しかし、患者さん一人ひとりを見ると、その病態は一様ではなく、治療に対する効果や副作用には個人差があり、様々な事象が起き得ます。そこで、薬剤に対する最新の知識はもちろんですが、何故かという疑問を持ち解決する努力をし、それぞれの患者さんから学ぶ姿勢で診療に臨むことで、より良い診療を行うことを心がけています。また、肺病変などの臓器障害や、合併症を持つ患者さんでは、他科のサポートを仰ぎながら治療にあたります。このように他診療科と緊密に連携して総合的に治療に取り組み、ベストの選択を考慮することも重要と考えています。
患者さんと十分に話し合い、適切な治療を選択
治療をより効果的なものにするためには、患者さんに病気をきちんと理解していただき、主治医とよく相談して、納得のうえで治療方法を選んでいくことが大切だといわれます。これを「シェアード・ディシジョン・メイキング」といいます。このため、診察では説明に十分な時間をかけ、患者さんが話しやすい環境を作るようにしています。
患者さんからは「いつまで薬物治療を続けるのですか」と聞かれることが多いのですが、症状がほとんど消失し、完全に薬剤を中止できる症例は約1割と少なく、多くの患者さんは薬をずっと続けていかなくてはならないのが現実です。ただし、病状が良くなれば、減らしていくことは可能です。また、高血圧や糖尿病など合併症を持つ患者さんでは、多数の処方薬を併用している方が少なくありませんので、副作用を減らす意味からも、適切な薬剤選択を考え、減らせる薬は減らすようにしています。
ストレッチとウォーキング、栄養バランスの良い食事を心がける
関節リウマチは進行すると、関節周囲の組織が固まってしまい動かせなくなる場合もあります。まずは薬物治療などで関節の痛みや炎症を抑え、その上で肩や肘、手首・指などのストレッチを行い、関節の可動域を保つようにしましょう。また、ウォーキングも衰えやすい膝や股関節などの荷重関節を鍛えることができますので、習慣づけていただくと良いと思います。
栄養のバランスの取れた食事を摂ることも大切です。関節リウマチでは骨粗鬆症を併発しやすいので、カルシウムやビタミンDなどを積極的に摂ることが勧められます。また、魚介類や魚油に含まれるオメガ3脂肪酸には抗炎症作用があり、関節リウマチの症状を緩和するとの研究報告もあります。
患者さんの思いをご家族も共有して
関節リウマチの症状は、日や時間帯によって波があるなど複雑なため、周囲の理解が得られず、患者さんが一人で悩みを抱え込んでいることは少なくありません。ご家族の方には、ぜひ、患者さんの症状や思いについて理解を深め、心の支えとなってほしいと思います。また、患者さんだけではなく、ご家族の方も気になることがあれば、主治医にお話しいただければと思います。
松本 功 先生
1991年北海道大学医学部卒業。同年千葉大学医学部第二内科入局。 1992年成田赤十字病院内科。1995年千葉大学大学院医学研究科(内科学専攻)。1999年ハーバード大学医学部ジョスリン糖尿病センターリサーチフェロー。2001年筑波大学臨床医学系内科講師。2008年同大学医学医療系内科(膠原病・リウマチ・アレルギー)准教授。2022年より現職。
筑波大学附属病院
病床数:800床
所在地:茨城県つくば市天久保2丁目1番地1