先生からのメッセージ

納得したうえでの治療と適度な運動や感染対策が大切

  • 埼玉医科大学総合医療センター リウマチ・膠原病内科 教授
Amano Koichi
天野宏一先生

患者さんの理解と納得を得て治療

 当科の診療で最も心掛けていることは、患者さんと十分に病気や治療法の情報を共有し、患者さんが理解し納得したうえで治療を進めていくことです。Shared Decision Making(共同意思決定)と呼ばれ、患者さんにとって最善の治療方針を選択するためのコミュニケーションプロセスとされます。関節リウマチは、放置すれば関節が壊れて変形していく病気です。こうした病気の特性を理解した上で、薬の必要性を納得し、主体的に治療に臨んでいただくことが治療成績の向上につながります。また、いつも過剰な不安や心配な気持ちでいるとそれらがさまざまな身体症状につながることもありますので、できるだけ患者さんの悩みを和らげるような言葉をかけています。

 生物学的製剤やJAK阻害薬など新しい関節リウマチ治療薬の登場で、「寛解」という良好な状態になり、通常の生活ができている患者さんが多くなったのを喜ばしいことと感じています。 しかし、これらの薬剤は高価であるため、経済的な理由から使用を躊躇する患者さんもいらっしゃいます。そこで、我々は患者さんの経済的負担の軽減をねらい、症状が落ち着いている人に対してリウマチ治療薬の投与間隔を伸ばしたり、投与量を減らしても治療効果が保てるか安全性はどうかなど様々な検討を行っています。

天野宏一先生

休薬すべきか判断に迷ったときはやめておく

 患者さんが日常生活で気をつけるべき点としては、発熱や風邪症状など体調に何らかの不安がある場合、まず休薬し、主治医に相談することが挙げられます。メトトレキサート、生物学的製剤やJAK阻害薬などのリウマチ治療薬は免疫を抑える作用があるので、感染症の重症化リスクを高めます。休薬すべきかどうか判断に迷ったときは、とりあえず休薬して主治医にご相談ください。

 また、感染症対策としてマスクの着用や手洗いの励行などのほかに、ワクチンで防げる感染症として、新型コロナウイルス感染症、インフルエンザ、肺炎球菌性肺炎、帯状疱疹などがあります。アレルギー体質でない限り、これらの予防接種を積極的に受けていただきたいと思います。

可動域をしっかりと維持することが大事

 患者さんの中には健康増進のためにサプリメントを服用している方がいらっしゃいますが、葉酸含有のサプリメントを摂ると、メトトレキサートの効果が減弱し、関節リウマチが悪化する可能性がありますので注意が必要です。

 関節リウマチの治療は、薬物療法を基本として、リハビリテーションや運動、日常生活の工夫を組み合わせたケアが大事になります。とりわけ、関節や筋肉を動かすことは、運動機能の維持や関節の保護につながります。肘や膝を曲げたり伸ばしたり、肩を回すなど可動域をしっかりと維持するリハビリをかねた体操を普段から行うことをお勧めします。

天野宏一先生
天野宏一先生

天野 宏一

1983年慶應義塾大学医学部卒業。1985年国立療養所村山病院内科勤務。1987年慶應義塾大学医学部内科学教室助手(リウマチ内科)。 1990年埼玉医科大学総合医療センター第2内科助手。1993年米国テキサス大学Southwestern Medical Center 留学。1996年埼玉医科大学総合医療センター第2内科講師。1999年同科助教授。2005年 科名名称変更に伴い、リウマチ・膠原病内科准教授。2012年より現職。

埼玉医科大学総合医療センター

病床数:1,053床
所在地:埼玉県川越市鴨田1981番地

取材:2022年
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