先生からのメッセージ

日常の些細な変化を見逃さないで

  • 獨協医科大学埼玉医療センター 呼吸器・アレルギー内科 講師
Owada Takayoshi
大和田高義先生

呼吸器疾患のある関節リウマチ患者さんは症状メモの習慣を

 当院ではリウマチ・膠原病内科医が呼吸器・アレルギー内科に所属し、関節リウマチ診療を行っています。関節リウマチでは呼吸器疾患の合併が多いことが知られています1)。当診療科には呼吸器専門医が多く所属していることもあり、様々な呼吸器疾患を合併した関節リウマチの患者さんがしばしば紹介されてきます。合併する呼吸器疾患によっては関節リウマチの治療選択に大きく影響します。そのため、ほとんどの患者さんで胸部レントゲン検査に加えてCT検査を行い、より正確な病状の把握に努めています。

 関節リウマチの死因として呼吸器疾患は重要であり2)、呼吸器症状には結核や肺癌が隠れていることもあります。このためご自身の呼吸器症状を日頃からこまめにメモする習慣をつけていただくようお願いしています。ご面倒かもしれませんが定期的に通院し、症状を的確に伝えていただくことが重要です。

 呼吸器疾患の合併した関節リウマチ患者さんの診察時には以下のことをお話しいただければと思います。①痰の量が前回受診時より増えているか・減っているか、②痰に色がついているか、③痰の色は薄くなっているか・濃くなっているか、④痰に血が混じっているか、⑤一日何回痰が出るか、⑥息切れが前回受診時より増えていないか、⑦その他呼吸器全般の症状が悪くなっていないか、などの記録をお話しいただければと思います。かなり細かいと感じられるかもしれませんが、症状を正確に知ることが治療の第一歩です。患者さんには主体性をもって病気に立ち向かい、主治医にご自身の症状や経過を伝えるようにしてほしいと思います。

 特に症状が変わった時にはご注意ください。例えば気道疾患全般では痰の量が増えた時、間質性肺炎では息切れや痰を伴わない乾いた咳(乾性咳嗽)が多くなった時、非結核性抗酸菌症や結核の既往がある方では痰に血が混じっていた時です。その際には、次の予約日を待たずに早めに受診医療機関に連絡してください。

大和田高義先生

高齢者の関節リウマチでは些細な変化に注意

 高齢の関節リウマチ患者さんの割合が日本では増えています。当院の65歳以上の関節リウマチ患者さんの割合は、2020年の着任当時、既に全体の約3分の2にあたる68.1%に上っていました。一般的に高齢になると腎機能や肝機能、恒常性維持(身体の状態を一定に保とうとすること)が衰えるので細やかな注意が必要です。特に高齢の関節リウマチ患者さんでは、なにか問題が起こっても症状が現れにくいという特徴があります。例えば、患者さんの「ちょっと調子が悪い」の訴えから胸部レントゲン検査を行うと肺炎が見つかったり、病院入口の検温で微熱があったので検査をしたところ新型コロナウイルス陽性だったという事例がありました。ご家庭でも些細な変化に注意して、気になることがあれば、次の予約日を待たずに受診医療機関に連絡するように心がけてください。

 私は関節リウマチとして紹介されてきた患者さんでも、治療を開始する前に、診断に間違いがないかについて「石橋を叩いて渡る」をモットーに徹底的に調べることにしています。例えば、関節の痛みが、関節リウマチの悪化が原因か更年期障害が原因かによって治療も異なってきます。本当の原因を知るためにも患者さんに多くの質問をしています。主治医から様々な質問をされると思いますが、ご自身の病気に関心を寄せながら答えていただきたいです。

大和田高義先生

参考文献

大和田高義先生

大和田 高義

1998年に金沢大学医学部医学科を卒業。2006年千葉大学大学院医学薬学学府先端生命科学を修了し、労働者健康福祉機構横浜労災病院リウマチ膠原病内科医師となる。2007年千葉大学医学部附属病院アレルギー膠原病内科を経て、2009年獨協医科大学呼吸器・アレルギー内科へ異動。2016年獨協医科大学リウマチ・膠原病内科講師となり、2020年より現職。

獨協医科大学埼玉医療センター

病床数:923床
所在地:埼玉県越谷市南越谷2-1-50

取材:2022年
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