先生からのメッセージ

「無理しない」を基本に関節を守る習慣を

  • 九州大学大学院医学研究院 医学教育学講座 教授
Niiro Hiroaki
新納宏昭先生

身体も関節も無理は禁物

 関節リウマチ患者さんの日常生活では、疲れを翌日に持ち越さないことが基本です。調子が良い時、悪い時と体調が変化する病気ですので、身体がきついと感じたら自分で様子をみながら何事も調整して行うようにしましょう。翌日も疲れているようなら、無理をしていると考えてほしいです。

 体調が良い時にも慎重さが必要です。調子が良いと嬉しくて歩きすぎてしまう方がいますが、こういう時に骨折などの事故が起こりやすくなります。関節リウマチの典型的な症状は、手足の関節に炎症が起こり、機能が損なわれていくことです。とっさに身体を動かせず、受け身が取れないまま転倒して、大腿骨や手首を骨折される方がおられます。

 日常生活においては手や手首を使う動作で関節を傷めないよう十分気を付けて、物を回す、雑巾を絞る、手を洗うといった普通の生活動作でも、関節の状態によっては負担がかかることを意識していただきたいです。補助具が色々とあり、外出の際には杖やカートを使うなど、関節に無理がかからないように様々な用具の活用をお願いします。

 また健康を気遣いサプリメントを服用されている方が時折おられますが、サプリメントの中にはリウマチ治療薬の効果を弱くするものもあるので、服用前に必ず主治医に相談していただければと思います。

新納宏昭先生

炎症がある関節の見分け方

 正常な関節の温度は高くありません。例えばひざの皮膚温度は周りよりも少し低く、ひざ自体を触ると冷たく感じるものです。自分で触って関節が熱く感じる時には炎症があると思いましょう。両ひざを触って温度に左右差があれば、熱い方の膝は炎症が強いということになります。炎症がある関節に負担をかけると悪化しますので、日頃から関節を自分で触り、状態を確かめるようにしてください。関節は炎症の部位や強度によって負担のかかり方が違います。例えば、手を前後左右に動かす動作一つとっても個人によって異なります。ご自身の関節はどのような動きに弱いのかを知り、その方向に力がかからないようにしていただければと思います。

周囲の理解を得るには自分から話す

 関節に強い変形がない方は一見すると健康な方と変わりがないため、ご家族にもなかなか理解されないこともあります。このような場合、患者さんが一人で我慢してしまうと周りの方にますます理解されなくなってしまいます。関節リウマチでは、「だるい」「身体を動かすのが辛い」といった全身の疲労感も症状の一つであることをご家族に説明し、症状があれば話す習慣を心がけていただきたいです。

 お子さんにご自分の症状を説明し、病気の人がいたら優しく接するように教えている患者さんがいらっしゃいました。そういった周囲への働きかけが、関節リウマチや病気に対して優しい社会につながっていくと考えています。

新納宏昭先生
新納宏昭先生

新納 宏昭

1989年九州大学医学部を卒業し、同大学医学部附属病院第一内科研修医となる。1991年同大学医学部研究生を経て、1993年同大学医学部附属病院に入局する。1997年医学博士(九州大学)となる。1998年米国ワシントン大学ポストドクトラルフェローを経て2004年九州大学病院遺伝子細胞療法部に入局し、2016年九州大学大学院医学研究院医学教育学講座教授となる。2018年より同病院臨床教育研修センターセンター長を兼任し、現在に至る。

九州大学病院

病床数:1,267床
所在地:福岡県福岡市東区馬出3-1-1

取材:2022年
Page top