先生からのメッセージ

セルフケアを意識し、体を動かし、できることに挑戦

  • 飯塚病院 膠原病・リウマチ内科 部長
Uchino Ayumi
内野愛弓先生

高齢発症のリウマチが多い

 私が研修医であった2001年は関節リウマチへの生物学的製剤による治療が始まった頃で、リウマチ診療が大きく変貌する転換期でした。今後学問として興味深い分野になると伺っていたこともあって、膠原病・リウマチの診療に携わる決心をしました。関節リウマチ患者さんの予後は「関節破壊をいかに防ぐか」にかかっており、地域の病院や開業医と連携して可能な限り早期に専門的な治療を開始しています。また、病状が落ち着いている患者さんを開業医に紹介する連携にも積極的に取り組んでいます。

 当院は昔炭鉱で栄えた筑豊地区に位置し、福岡県の中でも高齢化が進んでいる地域です。最近は高齢になってから関節リウマチを発症する方が増えている傾向があります。高齢患者さんは糖尿病や肺疾患など関節リウマチ以外の病気を合併していることが多いため、十分配慮しながら治療を行うようにしています。

内野愛弓先生

自分自身の体調にしっかりと意識を向けて

 関節リウマチ治療薬には週数回服用するものや、体調がすぐれない時は服用を避ける必要があるものなど取扱いが特殊な部分があります。このため、薬を正しく服用することのほか、自分自身の体調をしっかりと認識し、いつもと違う場合はすぐに気づける「セルフケア」が極めて大切となります。とりわけ、高齢の患者さんの場合はご家族、あるいは施設に入られている方は介護する方と一緒に注意していただきたいと思います。体調を崩した場合はためらわずに主治医や看護師などに相談をしてください。

動かなさすぎる環境を少しでも改善

 新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、外出の自粛により体を動かす機会が減りました。患者さんから「ほとんど外に出なくなった」などの声が聞かれます。高齢者の場合、動かさなかった身体の機能の衰えが激しいとされます。ともすれば要介護の一歩手前の「フレイル(脆弱)」と呼ばれる状態に陥りかねません。元々フレイルの状態にある方ならば、要介護の状態に進んでしまうこともあるでしょう。これらを回避するためにも、動かなさすぎる環境の改善に少しでも努めていただきたいと思います。散歩やラジオ体操をはじめ、室内でするストレッチ、座ったままできるリウマチ体操などいろいろありますので、自分にあったものを見つけて、少しずつ、無理のない範囲で体を動かすようにしていただきたいです。

内野愛弓先生

できることはたくさんある

 関節リウマチ治療は格段に進歩し、疾患活動性をコントロールできるようになってきました。患者さんの中には病気だから多くのことはできないと思い込んでしまっている方がいますが、実はできることがたくさんあることを知ってほしいです。極端に言ってしまえば、病気を個性の1つとして前向きに考えていただけると良いなと思います。

 例えば患者さんから「仕事の時間を少し増やそうと思っていますがどうでしょうか」という相談を時々受けますが、過度に体に負担をかけるものでなければ「やって良いですよ」と答えています。このように、やって良いか悪いかの相談は多いのですが、やってはいけないことはそんなに多くはありません。病気であっても以前と同じような生活ができることを目標として患者さんと一緒に治療に取り組んでいます。

内野愛弓先生

内野 愛弓

2001年長崎大学医学部卒業。同年国立病院機構九州医療センター内科、2003年国立療養所南福岡病院リウマチ科、2004年九州大学大学院病態修復内科学講座、2008年北九州市立医療センター内科などを経て、2010年より飯塚病院膠原病・リウマチ内科に勤務、2020年より現職。

飯塚病院

病床数:1048床
所在地:福岡県飯塚市芳雄町3番83号

取材:2022年
Page top