先生からのメッセージ

関節リウマチ、大人と子どもの課題とは?

  • 独立行政法人国立病院機構 相模原病院 リウマチ科 部長
Matsui Toshihiro
松井利浩先生

日本のリウマチ治療の実態に迫るNinJaデータベース

 私が研修医だった今から25年以上前は、関節リウマチ患者さんというと、関節の変形が進み、車椅子や寝たきりで長期入院されるような方が多かった記憶があります。しかし現在、関節リウマチによる入院は珍しくなり、全体の半数近い患者さんが寛解を達成するようになってきました1)。こうした実態をデータとして把握できるのが、当院が中心となって構築した「NinJa」という関節リウマチデータベースです。

 今年20年目を迎えるNinJaには、北海道から沖縄まで様々な規模の国内約50施設が参加し、毎年約15,000人の患者さんの様々なデータが収集されています。NinJaのデータでは、以前多く使われていたステロイド薬や痛み止めの処方が減るとともに、現在のリウマチ治療で推奨されている抗リウマチ薬や生物学的製剤の使用が増えており、適切な治療が普及してきていることが示されています。

松井利浩先生

リウマチに多い悪性リンパ腫に注意

 しかしその一方で、NinJaのデータからは、高齢の患者さんが増加し、肺炎などの呼吸器合併症や腎機能の低下などで使用が制限される薬剤が出てきたり、治療薬の副作用や悪性腫瘍(がん)の罹患などの課題が出てきていることも分かっています。

 特に悪性リンパ腫は、リウマチ患者さんで一般人口の3~4倍認められています。リンパが腫れる、原因不明の熱や倦怠感が続く、体重が減るなどの症状が現れた場合には、リンパ腫をはじめとしてがんを疑い、病院で全身のチェックを受けるようにしましょう。患者さんには通常の健康診断や人間ドックは必ず受けるよう、いつもお願いしています。

子どもの関節リウマチは、大人への移行期が課題

 NinJaは大人の関節リウマチデータベースですが、小児でも若年性特発性関節炎(JIA)という関節リウマチに似た病態があることから、2019年から小児版NinJaである「CoNinJa」を立ち上げました。類似の疾患基盤のある小児患者さんをCoNinJa→NinJaと長期にわたりフォローすることで、こうした患者さんの長い経過を知り、治療に役立てることができると考えています。

 小児で発症するJIAは小児科を受診しますが、患者さんが成長すれば、大人を扱う成人診療科への転科が必要です。保護者に頼っている子どもの患者から自立した大人の患者への移行が非常に難しいと感じています。小児リウマチ学会からは、患者さんが大人として自分の症状を自分で把握し、伝え、管理する等ができるようになるための支援ツールなどもリリースされており、移行期の医療は充実してきています。今後、CoNinJaのデータが蓄積されていくことにより、さらに実態に合ったきめ細かな移行期医療を行えるようになることを期待しています。

松井利浩先生

不安や希望は主治医にしっかり伝えて

 時々リウマチの患者団体「リウマチ友の会」で電話相談を担当していますが、大人の患者さんであっても、主治医に自分の気持ちを伝えられない方が多いことに驚きます。希望しない治療を受けるようなことは、あってはなりません。不安や疑問は自分のこととして遠慮せず伝えるなど、患者さんには主治医と一歩踏み出して話せる関係性をしっかり確立していただきたいと願っています。

参考文献

松井利浩先生

松井 利浩

1993年群馬大学医学部を卒業し、1995年東京大学大学院医学系研究科内科学専攻(物療内科)に入学。1999年同専攻を修了し、聖マリアンナ医科大学 難病治療研究センター助手。2000年国立相模原病院臨床研究センター リウマチ性疾患研究部 流動研究員を経て同院(現、国立病院機構相模原病院)リウマチ科勤務。2018年より現職。

独立行政法人国立病院機構 相模原病院

病床数:458床
所在地:神奈川県相模原市南区桜台18-1

取材:2022年
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