先生からのメッセージ

関節リウマチのセルフケアと手術タイミング

  • 医療法人豊田会 刈谷豊田総合病院 リウマチ科 部長
Funahashi Koji
舟橋康治先生

リウマチ因子について

 関節リウマチでは早期発見、早期治療が重要ですが、経験を積んだ専門医でないと診断が難しいこともあり、適切なタイミングで治療を開始できない場合もあります。リウマチ因子が陽性であっても関節症状がなければ関節リウマチの診断には至りません。しかし、関節リウマチの患者さんでは、実際に症状が出るかなり前から血液検査でリウマチ因子(RF)と呼ばれる抗体の値が上昇している1)との報告もあります。人間ドックや会社の健康診断でリウマチ因子の検査項目は追加できる場合がありますので、陽性の際には専門医を受診し適切な経過観察を受けていただくことをお勧めします。

舟橋康治先生

関節リウマチの基礎療法

 関節リウマチの治療は、基礎療法、薬物療法、リハビリテーション、手術療法の4本柱で構成されています。ここでは、基礎療法と手術療法についてお話しします。

 基礎療法という言葉を初めて聞く方もいらっしゃるかもしれませんが、これは患者さんの日常のセルフケアのことで、いわば関節リウマチを意識した健康法のようなものです。治療を受ける際、体のコンディションを整えておくことは重要です。体調が悪いとリウマチの薬物療法が継続できなかったり副作用が生じやすくなったりします。ここでは体調を整えるためにご自身で簡単にできることをご紹介します。

よい睡眠とよい目覚め

 暗くなると眠気を誘うメラトニンという抗酸化作用のあるホルモンが分泌されます。夜間に浴びる光はメラトニンの分泌を減少させてしまい、睡眠を妨げてしまうと言われています。睡眠不足は疲労の回復を妨げますし、翌日の倦怠感につながります。就寝直前のテレビや携帯画面を見ることはメラトニンの分泌を減らしてしまう恐れがあり控えたほうが良いと言われています。

 また、朝の光には心を穏やかに保つ働きのある神経伝達物質セロトニンの活動を高める働きがあると言われています。朝日を浴びることで体内時計のリズムが整うとも言われており、規則的な起床と就寝が重要です。

舟橋康治先生

「笑い」は関節リウマチの炎症物質を減らす

 2つ目は、よく笑うことです。ストレスには笑いがよいことが知られていますが、笑いは関節リウマチの炎症にもよい影響があります。関節リウマチ患者さんの体内には、炎症を引き起こすIL-6というサイトカインの濃度が高くなっていることが知られています。関節リウマチ患者さんたちに落語を聞いてもらい、その前後で血液中のIL-6を測定したところ、落語鑑賞でたくさん笑った後にはIL-6が低下していたという研究結果が報告されています2)。笑う門には福来ると言いますが、日頃から愉快に過ごし、よく笑うことを心がけていただくことは心身にも関節リウマチにも良いようです。

人の歩行を左右する下肢の関節

 次は手術療法についてです。関節リウマチは関節破壊が進行していく病気です。特に膝関節や股関節に関節破壊が生じれば歩行という生きていくのに重要な動作に支障をきたします。私はリウマチ専門医と同時に整形外科専門医でもあり、関節リウマチの手術療法にも携わっていますが、膝関節・股関節に手術適応となるような関節破壊が生じて歩行や起立動作などの日常生活動作に支障をきたしていれば、患者さんには人工関節置換術を提案します。

手術はタイミングが肝心

 どんな手術にもリスクはあるので手術に消極的になる患者さんの気持ちもわかります。しかし、関節リウマチによる関節の変形は進行すると元に戻らない場合もあり、痛みのために関節を動かせない状態が長く続くと関節は固くなり、周囲の筋力も低下します。固まった関節の手術は、術後の動きも芳しくありません。手術を受けるかどうか、いつ受けるかは、患者さんのお気持ちを優先することが最も大事だと考えていますが、「関節機能が著しく低下してしまう前」が手術判断のタイミングであることを覚えておいていただければと思います。

参考文献

舟橋康治先生

舟橋 康治

1998年名古屋大学医学部医学科を卒業し、2006年同医学部大学院医学系研究科を修了する。西尾市民病院整形外科、国立名古屋病院(現:独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター)整形外科、2009年名古屋大学医学部附属病院整形外科、2016年医療法人豊田会 刈谷豊田総合病院整形外科。2020年より現職。

医療法人豊田会 刈谷豊田総合病院

病床数:704床
所在地:愛知県刈谷市住吉町5-15

取材:2022年
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