先生からのメッセージ

リウマチでは低栄養、喫煙、歯周病に注意

  • 新潟県立リウマチセンター 副院長
Ito Satoshi
伊藤聡先生

患者さんに客観的に病状を認識いただいたうえで治療を決定

 当センターは国内唯一の公立リウマチ専門病院として、関節リウマチのトータルマネジメントを目指し、内科医と整形外科医だけでなく、看護師、薬剤師、栄養士、理学療法士、作業療法士などとの多職種連携、及び毎週、当院へ通院しなくてもいいように患者さんのかかりつけの先生方とも連携して治療にあたっています。

 診療では患者さんとのコミュニケーションを重視しています。特に治療方針の決定は、病状の指標である「総合的疾患活動性指標(DAS28など)」をわかりやすく説明し、患者さんにご自身の病状を正確に認識してもらいながら、ディスカッションのうえで行います。患者さんと医療従事者が病状の指標を共有し、一緒に治療方針を決定していくことは、病気への理解が深まり、治療成績に好影響を与えていると思います。

伊藤聡先生

栄養と服薬がリウマチ治療の鍵

 関節リウマチでは、患者さんの栄養状態が悪いと、より病気が進行したり、感染症にかかりやすくなったりします。したがって、当センターでは栄養指導を積極的に行っています。関節リウマチの患者さんでは、特にビタミンDが不足していることがわかっていますが、関節リウマチは骨粗しょう症を合併しやすいこともあり、腸でのカルシウムの吸収を促進し骨の形成を促すビタミンDは必須の栄養素です。ビタミンDを豊富に含む鮭や干し椎茸、牛乳、ヨーグルトなどを積極的に摂るよう指導しています。

 また、薬をきちんと飲めているかどうかも病気の進行に影響します。特に若い方はこれから病歴が長くなりますので、しっかり服薬しないと、関節が破壊され、変形や機能障害が進行するリスクが高まります。服薬の必要性を十分に理解していただくとともに、薬が飲めない理由があるのであれば、主治医にご相談いただきたいと思います。

禁煙や歯周病予防も大事

 喫煙は関節リウマチの発症や悪化の要因であり、治療薬の効果を低下させるほか、肺や血管の病気を進めることもありますのでリウマチ治療の大きな妨げになります。禁煙することによって治療効果が回復することもわかっていますので、やはり禁煙していただきたいと思います。また、関節リウマチ患者さんでは歯周病があると自分の組織を攻撃する自己抗体が産生されやすくなり病状が悪化しやすいと考えられています。歯周病の治療・予防により関節リウマチの症状が改善するとの研究報告もありますので、定期的な歯科検診や歯のクリーニング、適切な歯磨きの励行をお勧めします。手の変形などにより歯磨きがしづらい場合は、歯科医に相談して、使いやすい歯ブラシを選んでもらうと良いでしょう。

 患者さんの悩みは、なかなか周りの人に理解されづらく、朝起きられないとか、体が動かないといったことが怠けていると思われていたというケースもあります。関節リウマチ治療は、患者さんのもっとも近くにいるご家族の協力と理解が必要不可欠といえます。患者さんもご家族に自分の症状や困っていることを遠慮せず伝えるようにしてみてはいかがでしょうか。

伊藤聡先生
伊藤聡先生

伊藤 聡

1985年新潟大学医学部卒業後、第二内科入局。1995年米国FDA客員研究員。1997年新潟大学医学部付属病院第二内科医員。2002年ドイツ・バッドブラムシュテットリウマチセンターなどに留学。2003年筑波大学臨床医学系内科講師、2007年筑波大学大学院臨床免疫学准教授を経て、 2010年新潟県立リウマチセンターリウマチ科部長。2013年より現職。

新潟県立リウマチセンター

病床数:100床
所在地:新潟県新発田市本町1丁目2番8号

取材:2022年
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