先生からのメッセージ

リウマチによる足の変形・痛みの治療

  • 岐阜大学大学院医学系研究科
  • 整形外科学関節再建外科学先端医療講座 特任助教
Iwata Takahiro
岩田崇裕先生

足の悩みを抱えている患者さんは少なくない

 リウマチで足指が変形して靴が合わない、歩行が不安定で転倒しやすい、指が重なり合って歩くと痛いなど、足の悩みを抱えている患者さんは少なくありません。しかし、リウマチは手の症状が多いので、医師から「足の調子はどうですか」と聞かれることは稀かもしれません。患者さんも靴下を脱いで足を見せるのに抵抗がある方もおり、足指が変形している患者さんが潜在化している可能性があります。実際、当科では罹病期間が長い患者さんを診ていることもあり、関節破壊が進行して足指の変形や痛みに悩まされている患者さんをしばしば見受けます。

岩田崇裕先生

靴選びのポイント

 当科では、足の変形がある場合は、まずは保存治療の一つとして靴の指導を行います。足に合う靴を履くことによって、痛みや歩行バランスが改善されますので、自分に合った一足を探してみていただきたいと思います。靴を選ぶポイントとしては、①足指の前方と上方に少し空間があり、圧迫されない、②足指の付け根付近の、外反母趾などで骨が突起している部分が圧迫されない、③底に柔らかいクッションがある、④前後のサイズが合う、などが望ましく、また、外反母趾や扁平足には足部の生理的なアーチを支持するための足底挿板(インソール)もありますので、主治医にご相談ください。足底の痛みを伴う胼胝(たこ)は外反母趾や扁平足でよく見られます。母趾が変形することで、残りの足趾にかかる負担が増え、胼胝ができます。パッドとアーチ・サポートをつけたインソールを装着することで胼胝にかかる荷重を分散し痛みを軽減する効果があります。

関節を温存する手術の普及で日常生活動作が向上

 薬物治療の進歩によって関節リウマチの進行はかなり抑えられるようになりましたが、足指などの関節の変形が進んでしまう患者さんは一定数います。薬物療法や変形を矯正し関節を安定させる装具療法などの保存療法では改善せず、痛みや歩行などの日常動作に支障を来たしている場合は、手術が選択されることもあります。

 かつては足指の関節を切除して変形を治す手術が行われていました。しかし、関節を切除すると、歩くときの地面を蹴る動作である「踏み返し」ができず歩きづらくなるため、最近では関節を温存し、骨の一部のみを切除する手術方法が普及しています。当院でも可能な限り、関節を温存する手術を行っています。これにより、自然な歩行が可能になり、患者さんの満足度も上がっているようです。なお、手術には入院が必要で、術後3週間で固定したワイヤーを抜く処置や、リハビリテーションを行います。関節リウマチの足の手術に関しては、日本は進んだ技術を持っており、世界をリードしています。足指の変形による痛みにお悩みの方は、是非主治医に相談してみてください。

岩田崇裕先生
岩田崇裕先生

岩田 崇裕

2002年旭川医科大学医学部医学科卒業。同年、岐阜大学医学部附属病院整形外科に勤務。2004年岐北厚生病院整形外科、2006年高山赤十字病院整形外科、2014年京都大学医学部附属病院整形外科などを経て現職。

岐阜大学医学部附属病院

病床数:614床
所在地:岐阜県岐阜市柳戸1番1

取材:2022年
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