先生からのメッセージ

関節リウマチ患者で注意したい 感染症・フレイル・骨粗鬆症

  • 宮崎大学医学部内科学講座
  • 呼吸器・膠原病・感染症・脳神経内科学分野 准教授
Umekita Kunihiko
梅北邦彦先生

患者さんに安心を与える診療を心がける

 関節リウマチは中年に発症することが多いと言われておりますが、近年は高齢になって発症するケースも増えており、高齢化が進んでいます。近隣の開業医などから紹介患者さんを受け入れている当科でも同様の傾向がみられます。

 患者さんの中には痛みに悩まされたり合併症などが起こったりと、不安を抱える方もおられます。そのため、診察では明るい話題などを交えてコミュニケーションをとるよう心がけています。そうすることで、患者さんの方から病状だけでなく、治療効果に影響を与える家庭環境の変化などの話もしていただけます。外来から帰る際に患者さんが抱えているストレスや不安を少しでも和らげたいと考えております。

梅北邦彦先生

感染症対策や口腔ケアが大事

 関節リウマチの病状コントロールに加えて、治療で免疫を調整・抑制する薬物治療が中心となるため、感染症への対策がとても重要になります。特に予防できる感染症対策として、ワクチン接種があります。可能であれば、①肺炎球菌ワクチン、②インフルエンザワクチン、③帯状疱疹ワクチンの3つは受けていただきたいです。肺炎球菌ワクチンは、死亡原因の上位となっている肺炎を予防するためです。また、インフルエンザワクチンは、高齢者の場合にはインフルエンザによる入院・死亡を減らすことが証明されています。帯状疱疹ワクチンは、体の片側の一部にピリピリした痛み、赤い発疹が発生する帯状疱疹の発症を予防します。また、虫歯や歯周病があると体内で炎症が生じ、関節リウマチが悪化しやすいとされています。毎日の丁寧な歯磨きや年に1度の歯周病チェックなど口の中の衛生を保つことが大事です。

高齢患者さんが気を付けたいフレイルや骨粗鬆症

 フレイルとは、高齢者の身体的機能や認知機能が少しずつ衰えてくる状態です。関節リウマチはフレイルの悪化要因の1つとされます。関節が悪いので運動不足になってしまうためです。適度な運動により、関節の機能や筋力を維持することができると言われておりますので、主治医の先生とご相談の上、無理のない範囲で運動を続けることが大事です。

 また、関節リウマチは身体に炎症が生じており、その影響で骨粗鬆症になりやすくなっています。関節リウマチの治療薬として使われるステロイド薬の影響で、骨粗鬆症が悪化することもあるので注意が必要です。骨が脆くなると転倒がきっかけで骨折をしてしまうこともあり、病状のコントロールとともに場合によっては骨粗鬆症の治療薬が使われることもあります。転倒予防のために玄関などの段差をなくすなど住居環境にも目を向けていただき、補助金などを活用するのも良い方法だと思います。

梅北邦彦先生

関節リウマチ治療のためのサポート環境整備を

 関節リウマチは適切に診断を受けて治療しないと機能障害が残る病気です。最近は関節リウマチの治療薬が非常に良くなっておりますが、高齢患者さんの服薬が確実に行えるようにご家族のサポートも必要です。高齢者だけの世帯も増えており、服薬状況のチェックが難しくなるケースも見受けられますので、場合によっては福祉や訪問看護などの利用も考慮されてはいかがでしょうか。また、リウマチの正しい情報を得るために「リウマチ友の会」に参加することも良いと思います。

梅北邦彦先生

梅北 邦彦

2002年宮崎医科大学医学部卒業、同大学第二内科に入局する。2012-2014年チューリッヒ大学リウマチ学教室留学などを経て、2017年宮崎大学医学部内科学講座免疫感染病態学分野講師、2019年に同分野准教授。2021年より同内科学講座呼吸器・膠原病・感染症・脳神経内科学分野准教授、同附属病院膠原病内科診療科長および検査部長に就任。日本リウマチ学会専門医・総合内科専門医。

宮崎大学医学部附属病院

病床数:632床
所在地:宮崎県宮崎市清武町木原5200

取材:2022年
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