先生からのメッセージ

患者さんの将来を見据えた疾患コントロールを目指す

  • 日本赤十字社 高知赤十字病院 副院長
Arii Kaoru
有井 薫先生

高齢患者さんほど早期治療が大切

 人口の高齢化に伴い、関節リウマチ患者さんも高齢者の割合が増えています。特に近年は、若い頃から治療をしてきた患者さんの高齢化に加えて、高齢になってから関節リウマチを発症する患者さんが増加しています。高齢発症の関節リウマチでは、特に迅速な薬物療法による早期寛解の達成が治療成功の鍵となります。治療が遅れると、高齢者では急速にADL(日常生活動作)が低下し、フレイル(体全体の衰弱)やサルコペニア(筋肉量・筋力の減少)につながりやすいからです。

適切な服薬と感染症予防を

 関節リウマチの患者さんが日常生活で特に注意すべきことは、適切な服薬と感染症予防です。

 関節リウマチの治療薬は、医師の指示通りに服薬を継続することが基本ですが、体調の悪い日(シックデイ)は休薬する必要があります。高齢患者さんでは感染症などに罹っていても症状が出にくいことがありますので、例えば、元気がなく、食事が普段の6割程度の量しか摂取できていないといった状態であれば、シックデイの可能性を考えてその日は休薬してください。なお、体調不良が続くようであれば早めにかかりつけ医を受診することをお勧めします。

 また、関節リウマチの治療薬は免疫を抑制しますので、患者さんは感染症に罹りやすくなります。手洗い・うがいなどの基本的な感染症予防対策の徹底に加え、ワクチン接種も積極的に行っていただきたいです。推奨されるワクチンとして、インフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチン、帯状疱疹ワクチン、コロナワクチンがあります。なお、帯状疱疹ワクチンは2025年4月から定期接種化され、一部自治体では公費負担での接種が可能となりました。

有井 薫先生

正しい食生活で肥満を防ぐ

 生活習慣の改善も重要です。

 バランスの良い食事を規則正しく摂るよう心がけ、適正体重を保つようにしましょう。肥満は関節への負担を増大させ、関節リウマチの症状を悪化させる可能性があります。体重調整で症状改善が得られるケースもあります。これは関節への負荷が軽減されることに加え、関節炎を増悪させる炎症性サイトカインは脂肪組織から分泌されるため1)、それが抑制されるからだと考えられています。

 運動については、関節に負担をかける激しい運動は避けていただきたいですが、筋力維持は重要です。日常生活の中で意識的に筋肉を使うことや、ストレッチを中心とした軽い運動を継続していただきたいと思います。

有井 薫先生

ご家族からの情報は治療方針の決定に有用

 患者さんのご家族には、可能な限り診察に同席していただくことをお願いします。ご家族から患者さんの日常生活動作レベル(屋内歩行の状況、杖の使用状況など)についての客観的な情報をお聞きすることは、治療方針を決定する上で有益だからです。

 関節リウマチは治療薬の飛躍的な進歩により、痛みや関節の変形をコントロールできるようになり、普通の日常生活を送ることも目指せる疾患となりました。適切な治療を継続すれば、女性患者さんでは妊娠・出産も可能ですし、高齢の患者さんが関節リウマチによって寝たきりになることもほとんどありません。患者さんの将来を見据え、長期的な視点に立った治療を提供できるよう日々の診療に取り組んでいきたいと考えています。

参考文献

  • 1)Sudol-Szopinska I, et al. J Ultrason. 2013; 13(53): 192-201.

有井 薫先生

有井 薫

1993年高知医科大学医学部卒業。1997年高知医科大学大学院医学研究科博士課程修了。1997年高知赤十字病院内科。2001年高知医科大学第二内科助手(現、高知大学医学部内分泌代謝・腎臓内科学助教)。2008年高知赤十字病院内科第四内科副部長。2010年同科部長。2020年同科診療部長兼第二内科部長。2025年より現職。

日本赤十字社 高知赤十字病院

病床数:402床
所在地:高知県高知市秦南町一丁目4番63-11号

取材:2025年

※所属および掲載内容は、取材当時のものです。

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