先生からのメッセージ
- 産業医科大学医学部 第1内科学講座 教授
高齢者ほど早期から効果の高い治療を
超高齢社会の進行とともに、関節リウマチ患者さんの高齢化が顕著になっています。従来、関節リウマチは30〜50歳代の女性に多い疾患とされてきましたが、近年は80歳を超えて初めて発症する方も珍しくありません。高齢の患者さんは病気の進行が早く、重症化しやすい傾向があります。特に膝などの大きな関節に強い痛みや炎症が起こると動けなくなり、急激に生活の質が低下したり、筋肉量の減少(サルコペニア)や全身機能の衰え(フレイル)につながることがあります。そのため、高齢者ほど早期から効果の高い治療を行い、症状を抑えることが重要となります。
患者さんを総合的に診ることで治療方針を決定
当院では、安全な分子標的治療薬の導入と、患者さんの治療への意識を高めるため、日常生活を離れて病気に向き合えるよう治療開始前に3泊4日程度の入院を勧めています。入院中には、全身のスクリーニングや病気全般の説明、治療方針の決定などを行います。治療方針はスクリーニングの結果や患者さんの事情や希望を総合的に考慮しながら一緒に決めていきます。昨今、関節リウマチ治療薬の選択肢は多く、患者さん一人ひとりに適した治療選択が可能になっています。治療方針を決める際は、遠慮なく希望をお伝えいただきたいと思います。
患者さんの利便性を考慮した段階的診療システム
当院の診療圏は北九州全域から山口県下関市までをも含み非常に広域となっています。しかし、関節リウマチ患者さんは足腰が悪い方も多く、遠方からの来院が難しいこともあります。そこで、当科の医師が地域の基幹病院へ出張して外来を行い、通常は最寄りの出張外来で診断・治療を受けていただき、専門的な治療や詳しい検査が必要な場合に当院に来ていただくようにしています。患者さんの利便性を重視しながら、大学病院への紹介もスムーズなこの段階的な診療システムにより、患者さんのアクセス向上と質の高い専門医療の両立を図っています。
日常生活の注意点と合併症予防への取り組み
日常生活の注意点としては、歯周病が関節リウマチの発症・悪化に大きく関与するため1)、3〜6カ月ごとに歯科健診を受けましょう。また、腸内細菌を整えることが関節リウマチに良い影響があることが示唆されています2)。便秘改善や全身の健康維持のため、ラジオ体操やテレビ体操などの軽い運動を日常的に取り入れることも良いでしょう。
さらに、関節リウマチの治療により感染症のリスクが高まる可能性があるため、インフルエンザ、肺炎球菌、帯状疱疹などの予防接種もできるだけ受けていただきたいです。
関節リウマチ患者さんは骨粗鬆症を合併しやすいので、適度な運動やカルシウム摂取を心がけてください。定期的に骨密度検査を受けることも重要です。
適切な治療でやりたいことを諦めない毎日を目指す
患者さんに最も伝えたいことは、毎日を前向きに明るく過ごしてほしいということです。関節リウマチは、適切な治療を受ければ、病気になる前と同じような生活を送ることも可能になってきています。仕事を頑張りたい、お子さんを持ちたいなど、ご自身の希望を主治医にお話しいただければ、それに適した治療を提案します。行動に自ら制限をかけず、ご自身のやりたいことに前向きに取り組みながら、治療に臨んでいただきたいと考えています。
患者さんのご家族や職場の皆様も、関節リウマチは適切な治療を受ければ普通の生活を送ることが可能な病気であることをご理解いただき、患者さんが治療に専念できるようサポートいただきたいと思います。
参考文献
1)Zhang X, et al.: Clin Rheumatol. 2023; 42(3): 663-672.
2)Bungau SG, et al.: Nutrients. 2021; 13(10): 3376.
中山田 真吾 先生
1996年産業医科大学医学部卒業後、同大医学部第1内科学研修医。1998年社会保険小倉記念病院専門修練医を経て、1999年産業医科大学病院第1内科専門修練医 (膠原病・リウマチ学)。2004年同大大学院医学研究科博士課程修了後、同大医学部第1内科学講座助手 (膠原病・リウマチ学)。2007年三菱重工業株式会社神戸造船所三菱神戸病院健康管理グループ産業医、神戸大学大学院医学系研究科生理学・細胞生物学非常勤研究員を兼任。2009年米国国立衛生研究所(NIH)訪問研究員。2012年産業医科大学医学部第1内科学講座学内講師。2014年同講座講師、2021年同講座准教授を経て、2025年から現職。
産業医科大学病院
病床数:664床
所在地:福岡県北九州市八幡西区医生ケ丘1番1号
※所属および掲載内容は、取材当時のものです。