先生からのメッセージ
- 宮里クリニック 院長
高齢者ではリウマチ性多発筋痛症との鑑別が重要
関節リウマチ診察の基本は、患者さんの訴えに謙虚に耳を傾け、視診と触診によって病態を正確に把握し、最新の医学知見を念頭に適切な診断プロセスを経て、最適な治療法を導き出すことです。日々の診療では、これらの基本を確実に実践し、正確な診断と丁寧な対応を心がけています。
近年、高齢で関節リウマチを発症する患者さんが増加傾向にありますが、高齢者ではリウマチ性多発筋痛症の発症リスクも高くなります。リウマチ性多発筋痛症は、名称にリウマチという言葉が入っており症状も関節リウマチとよく似ていますが、治療法が異なる別の疾患です。そのため、関節リウマチとリウマチ性多発筋痛症の鑑別診断には細心の注意を払っています。
脂肪肝などの肝臓病は治療の選択肢を狭める
基本的な関節リウマチ治療薬であるメトトレキサートは、肝臓に病気があると使用できないことがあります。基本薬が使えないと治療の選択肢が狭まり、治療効果があがりにくくなってしまいますので、脂肪肝などご自身で予防できる肝臓病にはご注意いただきたいと思います。
脂肪肝とは肝臓に過剰な脂肪が蓄積した状態を指し、関節リウマチ治療の妨げになるほか、肝硬変や肝がん、生活習慣病の発症リスクになることもあります。脂肪肝を予防するには、栄養バランスの良い食生活を心がけ、とくに動物性脂肪を摂り過ぎないようにしましょう。適度な運動も必要ですが、関節に負担をかけ過ぎないようにしてください。目安としては週3~4回、1日30分あるいは5,000~7,000歩程度のウォーキングがお勧めです。また、肥満を防ぐために週1回は体重を測ると良いでしょう。
基本的な予防策やワクチン接種で感染症を防ぐ
関節リウマチ患者さんは、治療薬の影響により免疫能が低下することがあります。したがって、風邪などの感染症に罹りやすく、また、罹ると治りにくく症状が長引きがちになります。日頃から、手洗いやマスクの着用、人混みを避けるなど感染症の予防対策を徹底し、ワクチン接種も受けると良いでしょう。ワクチンを接種することで、感染症の発症や重症化のリスクを下げることができます。
なお、咳などの風邪症状や発熱などがある場合は、治療薬を休薬する必要があります。症状がある場合は速やかに主治医にご連絡ください。
ご家族は患者さんの変化にご注意を
高齢の患者さんはご自身の症状や変化に気づきにくく、また、気づいていても主治医に訴えないことがあるため、適切な治療が行われない状況に陥ることがあります。このような状況を避けるため、ご家族や身近な方は患者さんの様子に気を配り、気づいたことがあれば、受診時に主治医に伝えるよう患者さんを促したり、診察に同伴いただき直接主治医にお話しいただくようお願いします。ご家族の視点は、主治医にとって貴重な情報となります。
関節リウマチの治療は進歩しています。諦めずに治療を継続すれば、完治は難しいものの、症状はかなり緩和されていきます。前向きな姿勢で治療に臨み、人生100年時代を極力不自由なく過ごしていただきたいと思います。
宮里 肇 先生
1993年近畿大学医学部卒業後、同大医学部第3内科(血液、腎臓、膠原病内科)入局。1999年同大医学部大学院卒業(医学博士)。同年同大医学部附属病院(血液、腎臓、膠原病内科)助手。2003年周南記念病院内科。2006年宮里クリニック開設。
宮里クリニック
病床数:なし
所在地:山口県周南市大内町9-16