先生からのメッセージ
- 佐川昭リウマチクリニック 理事長
関節エコー検査は早期発見に有用
関節リウマチの適切な治療を行うためには正しい診断が不可欠です。診断には問診のほかいくつかの検査を行いますが、なかでも画像検査は病状を的確に把握し、最適な治療計画を決める上で重要です。画像検査の代表はX線検査ですが、ごく早期の関節リウマチでは変化がわかりにくいため、関節エコー検査やMRI検査を併せて行います。関節エコー検査は炎症反応を捉えるため、早期発見に有用です。診察時に手軽に行えますので、治療開始後も病状の把握や治療効果の確認に役立ちます。一方、MRI検査は大掛かりな機器を用いますので限られた施設でしか行えませんが、造影剤を使用することで早期の滑膜炎を検出し、病態を詳細に把握することができます。
軽い症状でも深刻な病気の場合も
関節リウマチ患者さんの健康管理で最も重要なことは、いつもと違う症状がみられるなど何か異変があった場合はすぐに主治医に連絡し指示を仰ぐことです。心配されるのは、治療薬の副作用や合併症に加え、免疫を抑制する薬剤を使用しますので感染症のリスクが高まることです。傷や関節以外の部位の腫れなどは、軽い症状でも深刻な病気が潜んでいることがあります。例えば、片側の脚や手が赤く腫れたら、細菌が傷から侵入し皮下組織で炎症を起こす蜂窩織炎の可能性があります。蜂窩織炎は放置すると腫れが拡大していきますので、速やかな対処が必要です。発熱や咳、痰などが続く場合は、インフルエンザや新型コロナウイルス感染症、肺炎などの可能性があるため、早めに主治医にご連絡ください。
定期的な歯科検診が大切
関節リウマチは、歯周病があると病状が悪化しやすいと考えられており、また、口腔ケアや歯周病治療によってリウマチ症状は改善することがわかってきました。したがって、患者さんには定期的な歯科検診や歯のクリーニング、適切な歯磨きの励行をお勧めします。また、関節リウマチ患者さんは骨粗鬆症の治療を受けている方が少なくありませんが、一部の骨粗鬆症治療薬の服用で顎骨壊死のリスクが高まることがあります。抜歯などの治療の際には主治医と歯科医との間で相談してもらい、指示を仰いでください。
パートナーの理解がより良い治療につながる
私が診察している患者さんにおいて、どんなことが関節リウマチの悪化要因になっているのかを調査してみました。その結果、お正月やお盆、法事の際などの「お客の接待」、理解のない夫や育児などの「対人関係」、床拭きやアイロンかけといった「家事」などが挙がりました。関節リウマチの患者さんは女性が多いためか、家庭内の仕事の負担が悪化につながっていることが伺われます。“理解のない夫”も悪化要因の1つに挙がっていますが、患者さんのパートナーは病気を理解し、患者さんの負担を軽減してあげたり、心身ともに休める時間を作ってあげるよう努めていただきたいと思います。
若い世代では、将来的に妊娠や出産を考えられている方も多いと思います。関節リウマチでも妊娠・出産は可能ですが、治療薬の調整などが必要になりますので、やはりパートナーも一緒に診察に来ていただき、病気や治療について理解を深めていただければと思います。
佐川 昭 先生
1969年北海道大学医学部卒業。1979年同大医学部第二内科。1992年同科講師。1993年札幌山の上病院リウマチ膠原病センター長。1995年同院院長。2006年佐川昭リウマチクリニック開設。斗南病院顧問医兼任。
佐川昭リウマチクリニック
病床数:なし
所在地:札幌市中央区北1条西7丁目パシフィックマークス札幌北1条5階