先生からのメッセージ

病気を怖がらず、前向きに治療に取り組むことが大切

  • とうきょうスカイツリー駅前内科 院長
Kawano Shinya
河野 晋也先生

関節リウマチは怖い病気ではない

 関節リウマチと診断されると「怖い病気にかかってしまった」と落ち込んでしまう患者さんは多いです。しかし、関節リウマチは決して稀な病気でも悲観すべき病気でもありません。患者さんは日本人の約0.65%1)、概ね200人に1人程度の割合でいらっしゃいます。治療は進歩していますから、落胆せず前向きに治療に取り組めばこれまで通りの生活を送ることも可能です。薬や治療方法の選択肢も増えていますので、医療者は十分な情報提供とコミュニケーションを心がけ、患者さん一人ひとりに適した治療を提供できるよう努めています。

ストレスや関節への負担のない生活習慣を

 日常生活では、ストレス軽減や規則正しい生活習慣が大切です。ストレスは炎症を抑える力を低下させ、関節リウマチの症状を悪化させます。過労や生活習慣の乱れは症状の悪化の引き金となることがあります。仕事をしている方は過度な残業を避ける、家庭内ではコミュニケーションを大切にするなど、ストレスが溜まらない生活を心がけてください。

 また、関節リウマチ患者さんでは関節の可動域が狭まったり、筋力が低下したりしがちです。これらの予防には、適度な運動が必要で、とくにリウマチ体操はおすすめです。ただし、やり過ぎは痛みや腫れの原因になりますので、ご自分なりに加減しながら運動量の目安を決めて行いましょう。家事などの日常動作も無理のないように行ってください。とくに産後の患者さんは赤ちゃんの抱っこなど、これまで使わなかった関節や筋肉を酷使しがちですので注意してください。ご家族は積極的にサポートをしていただきたいと思います。

河野 晋也先生

関節リウマチに合併しやすい骨粗鬆症と貧血

 関節リウマチは骨を壊す破骨細胞が活性化する病気ですので、骨粗鬆症になりやすくなります。骨粗鬆症になると関節の変形も進みやすくなりますので、骨密度検査を定期的に行い、骨密度の低下がみられたら治療を受けましょう。骨粗鬆症の予防にはカルシウムやビタミンDを豊富に含むバランスの良い食生活、適度な運動、紫外線対策をした上での日光浴などが効果的です。

 貧血も関節リウマチの合併症として少なからずみられます。関節リウマチに伴う貧血は、関節リウマチの原因となる炎症性の物質によって体内に蓄えられている鉄が十分に使われなかったり、食事から摂取した鉄が消化管からうまく吸収されないことによって引き起こされると考えられています。ふらつきや疲労感、息切れ、動悸などの症状がある場合は主治医に相談してください。薬の追加や変更などで症状が改善し、生活の質の向上のほか、関節リウマチの症状改善も期待できます2,3)

河野 晋也先生

がん検診と関節リウマチの検査は異なる

 関節リウマチの治療では、腫れや炎症の程度を判断するため、通常2〜3か月に1回の血液検査が行われます。患者さんの中には、こうした検査でがんの早期発見もできると思っている方がおられます。しかし、関節リウマチの血液検査でがんを発見することはできませんし、血液検査でわかるがんは進行していることが多いので、がん検診はぜひ受けていただきたいと思います。とくに40歳を過ぎたら胃がん・大腸がん・肺がん検診を受けることをお勧めします。さらに女性は乳がんや子宮がんなどの婦人科系のがん、男性は前立腺がんの検診も望まれます。

参考文献

  • 1)Nakajima A, et al: Int J Rheum Dis. 2020; 23(12): 1676-1684.

    2)Han C, et al: J Rheumatol. 2007; 34(11): 2177-2182.

    3)Möller B, et al: Ann Rheum Dis. 2014; 73(4): 691-696.

河野 晋也先生

河野 晋也

2006年順天堂大学医学部卒業。同年同大医学部附属順天堂医院臨床研修医。2008年同大医学部膠原病内科学講座専攻生。翌年同大大学院医学研究科入学。2013年同大大学院卒業(博士号取得)。同年同大医学部膠原病リウマチ内科非常勤助教。2019年とうきょうスカイツリー駅前内科副院長。2021年より現職。

とうきょうスカイツリー駅前内科

病床数:なし
所在地:東京都墨田区向島3-33-13 リョービビル4F

取材:2023年
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