先生からのメッセージ

病状を悪化させないためにも禁煙や適切な口腔ケアを

  • 岐阜大学医学部附属病院 総合内科
Asano Motochika
浅野 元尋先生

禁煙が関節の病状改善に効果

 関節リウマチ患者さんにとって、禁煙は非常に重要です。喫煙は関節リウマチ発症に関わる抗CCP抗体という自己抗体を誘発させますし1)、発症後は抗リウマチ薬の効果を下げることがあります2)。喫煙の習慣がある方に禁煙の必要性をご理解いただくのは難しい場合もありますが、関節の痛みを訴える患者さんには禁煙が関節の病状改善に寄与する3)など、具体的な効果を説明し納得していただくように努めています。禁煙への取り組みにはご家族からの働きかけも効果的ですし、禁煙外来に通っていただくのも良いでしょう。禁煙の効果はすぐには現れませんが、1、2年経つと治療効果が上がってきますし、抗CCP抗体の数値も下がってきます4)

浅野 元尋先生

定期的な歯科受診と日ごろからの口腔ケアが望まれる

 関節リウマチ患者さんには、日ごろから口の中を清潔に保ち、定期的に歯科医を受診していただきたいと思います。

 関節リウマチ患者さんは骨粗鬆症薬を投与されている方も多いと思われますが、骨粗鬆症薬の1つであるビスホスホネート系薬剤の投与中に、虫歯治療や抜歯、口腔内不衛生などがあった場合、あごの骨に炎症が生じ、ひいては顎骨壊死を起こすことがあります。したがって、骨粗鬆症の治療を行う際は、事前に歯科医で適切な歯科処置や口腔ケアを行っておくことが大切です。

 また、歯周病があると、歯周病菌の酵素によりリウマチに関連するシトルリン化タンパクという自己抗体が増えるため5)、関節リウマチの病状が悪化しやすいとも考えられています。定期的に歯科医を受診し、歯周病の予防や治療を行ってください。

浅野 元尋先生

早期の受診と確実な服薬を

 最近は、60歳以上になってから発症する高齢発症関節リウマチが増えています。高齢者は痛みを感じにくいことがあり、関節破壊が進むまで気づかず放置されてしまうケースが見受けられます。関節リウマチは発症から2年以内に最も急速に症状が進行することがわかっており6)、発症初期から適切な治療を行うことが病気の進行を抑えるうえで重要です。朝のこわばりや関節の軽い痛みなどの違和感があれば、ためらわず早めに受診してほしいと思います。

 ご高齢の患者さんは自身で服薬を管理することが難しい場合もあるので、ご家族や訪問看護師などにサポートしていただき、服薬状況や注射製剤の場合は使用状況などの確認をしていただきたいと思います。

 関節リウマチ治療の進歩は著しく、新薬の登場により病気を良好にコントロールでき、健康な人と同様の生活が送れる時代になりつつあります。治療をきちんと継続すれば、好きなことを楽しむことも可能です。実際、痛みのため、趣味の山登りを断念していたが、新薬の恩恵により再開することができたという患者さんもいらっしゃいます。私としても患者さんの生活の質を向上させる診療を日々心がけていきたいと考えています。

参考文献

  • 1)Klareskog L, et al. Curr Opin Immunol. 2006; 18(6): 650-655.

  • 2)Saevarsdottir S, et al. Arthritis Rheum. 2011; 63(1): 26-36.

  • 3)Klareskog L, et al. Arthritis Rheum. 2006; 54(1): 38-46.

  • 4)Fisher BA, et al. Ann Rheum Dis. 2014; 73(4): 741-747.

  • 5)Mikuls TR, et al. Arthritis Rheum. 2014; 66(5): 1090-1100.

  • 6)van Nies JA, et al. Ann Rheum Dis. 2014; 73(5): 861-870.

浅野 元尋先生

浅野 元尋

2011年金沢医科大学医学部卒業。2012年岐阜大学医学部附属病院医員(研修医)。2014年同院医員(総合内科)。2015年岐阜市民病院医員(総合内科膠原病センター)。2016年羽島市民病院医員(総合内科)。2017年より現職。

岐阜大学医学部附属病院

病床数:614床
所在地:岐阜県岐阜市柳戸1番1

取材:2023年
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