先生からのメッセージ

関節を守るために―超音波検査と日常生活の注意

  • 富山大学附属病院 リウマチ・膠原病内科 診療教授
Shinoda Koichiro
篠田 晃一郎先生

早期発見に有用な関節超音波検査

 近年の検査機器の進歩は目覚ましく、触診や視診では疑わしい症例でも関節超音波検査により関節リウマチの存在が確認できるようになりました。当科では私も含め多くの医師が日本リウマチ学会登録ソノグラファーの資格を取得し、診察室で関節にさっと超音波を当てて診断する「Point of Care Ultrasound(POCUS;ちょい当てエコー)」を実践し、関節リウマチの早期発見に努めています。超音波検査は画像で確認できますので、病態や治療効果の説明の際にも患者さんの納得が得られやすく、治療意欲も高まるようです。

 その一方で、関節リウマチは関節さえ診ていればよいという病気ではなく、自己免疫疾患の一種であるため、全身的に合併症が起こる可能性があります。当科では他科とも連携し、治療薬の副作用も含め、患者さんの全身に気を配った診療を行っています。

篠田 晃一郎先生

治療で大切な通院の継続と処方通りの服薬

 関節リウマチの治療を成功させる上で大切なことは、通院を続けることと、薬とうまく付き合うことです。関節リウマチは治療薬の進歩により、以前のような関節のひどい変形などは見られなくなりました。しかし一方で治療薬の服薬管理は複雑化しています。定期的に専門医を受診し、病状や服薬状況を確認することは大切です。通院は続けるようにしてください。

 とくに関節リウマチでは、免疫を抑制する作用のある薬が使われます。風邪や新型コロナウイルス、ノロウイルスの感染などで体調が悪かったり、食事が取れないような場合には、免疫を抑制する薬を中止することも重要です。一方、痛みが強い場合などに処方されるステロイド薬は突然服薬を中止すると生命の危険が生じる場合もあります。処方された薬は、主治医や薬剤師の指示通りに服用し、気がかりなことがあればご相談いただければと思います。

 また、関節リウマチの治療薬の中には妊婦には禁忌となるものもあります。このため妊娠を希望される場合は、専門医と相談しながら計画的に妊娠するよう指導していますが、計画外の妊娠も多く、中には禁忌の薬を飲んでいたからと自己判断で中絶される方もおられます。しかし、このような場合でも妊娠を継続できるケースも多々ありますので、まずは専門医に相談するようにしてください。

関節の使い過ぎに要注意

 日常生活でご注意いただきたいのは、関節の使い過ぎです。関節リウマチは女性に多く、外見上は元気に見えるため、家事を普通にこなすよう要求されてしまいがちですが、家事で関節リウマチが悪化したという患者さんはたくさんいらっしゃいます。とくに重い鍋を持ったり、フライパンの柄をゆするなどの料理に多い動作や、草むしり、雪かきなどの動作は関節に負荷をかけ、関節リウマチを悪化させやすいので避けてください。

 患者さんの中には「関節を動かさないでいると固まって動かなくなってしまう」と心配し、無理に動かしてしまう方が時折いらっしゃいますが、これもやめましょう。バドミントンやテニス、ゴルフといった手首を使うスポーツも寛解を達成するまではお控えください。運動したい方は、浮力で関節に負担がかからない水中歩行や無理のない範囲でのウォーキングなどがお勧めです。

篠田 晃一郎先生
篠田 晃一郎先生

篠田 晃一郎

1995年富山医科薬科大学医学部医学科(現 富山大学医学部医学科)を卒業し、同大学附属病院第一内科研修医となる。2003年同大学医学部大学院を卒業後、同大学附属病院医員となる。2007年富山大学附属病院診療助手、2008年同大学大学院医学薬学研究部内科学第一教室助教を経て2008年同大学附属病院免疫膠原病内科診療准教授・診療副科長、2021年同大学大学院医学薬学研究部内科学第一講座講師に就任する。2022年より同大学附属病院リウマチ・膠原病内科診療教授を兼任。

富山大学附属病院

病床数:612床
所在地:富山県富山市杉谷2630番地

取材:2023年
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