先生からのメッセージ
- 岩手医科大学 内科学講座
- リウマチ・膠原病・アレルギー内科分野 教授
高齢の関節リウマチ患者さんに必要な他科との連携とご家族のサポート
かつて関節リウマチは若い女性に発症するといわれていましたが、近年は高齢になって発症するケースが増えています1)。高齢の患者さんは高血圧や狭心症、糖尿病などの持病があったり、様々な臓器での合併症を起こしやすいので、他科と連携しながら診療を行っています。
関節リウマチの治療で大切なのは、処方された薬を適切に服用することです。飲み忘れると、治療の効果を十分に受けられなくなります。薬が多くて飲み忘れるといった場合は、カレンダー型のピルケースなどを利用して、1回あたりの薬をまとめておくなどの工夫をすると良いでしょう。とくに高齢の患者さんのご家族は、飲み忘れのないようサポートをしていただきたいと思います。
関節リウマチのセルフケア
日常生活におけるセルフケアも大切です。喫煙や過度の飲酒は避けていただきたいと思います。口腔ケアも重要ですので、適切な歯磨きの励行や定期的な歯科検診をお勧めします。当科では虫歯の治療で関節炎・関節痛が改善したケースも経験しています。
関節や筋肉を動かして、運動機能を維持することも大事です。肩を回したり、肘や膝を曲げ伸ばしするなどの運動を行い、関節の可動域を維持しましょう。プールの中でのウォーキングは、浮力で膝や腰の関節に負担をかけずに筋肉を動かせます。ただし、明らかな炎症のある関節は無理に動かしてはいけません。また、個人差もありますので、運動を始める前に、どのような運動をどのくらいの強度で行ったら良いのかを主治医に相談しておくことをお勧めします。
いつもと違った症状が出たら、早めに主治医に相談を
関節リウマチの治療では免疫を抑える薬剤を投与することがあるため、感染症にかかると重症化しやすくなります。発熱や咳が続くなどいつもと違った症状が出たら、早めに主治医を受診してください。結核の既往がある患者さんは今まで免疫で封じ込められていた結核菌が免疫の抑制により再活性することがありますので注意が必要です。
医学・医療は日進月歩と言いますが、私たち医師も学ぶことをやめてしまうとあっという間に時代に取り残されてしまいます。「人生日々勉強」を座右の銘としてこれからも日々診療と同時に研究にも邁進していきたいと思っています。
当科では、患者さんの血液などから病気の原因に関わるような物質を見つけて、それを基に試験管や実験動物を用いた基礎研究を行い、そこで得られた結果を患者さんの治療に応用するというスタイルの研究を行っています。これまで炎症性腸疾患の活動性マーカーの実用化にこぎつけ、現在これを関節リウマチにも応用できるよう研究を進めています。
参考文献
1) Kato E. et al.: Int J Rheum Dis. 2017 ;20(7):839-845.
仲 哲治 先生
1987年富山大学医学部卒業。1998年大阪大学医学部助教。2006年医薬基盤研究所研究部長。2014年医薬基盤研究所免疫シグナルプロジェクトシニアプロジェクトリーダー。2016年高知大学医学部臨床免疫学講座教授および免疫難病センター長。2021年から現職。
岩手医科大学附属病院
病床数:1,000床
所在地:岩手県紫波郡矢巾町医大通り二丁目1番1号