先生からのメッセージ
- 自治医科大学 内科学講座 アレルギー膠原病学部門 教授
「笑顔で挨拶、優しい対応」がモットー
関節リウマチは40歳代に発症することが多いとされてきましたが、最近は60歳以降になって発症する患者さんも増え、高齢化が進んでいます1)。当科でも同様の傾向がみられます。
関節リウマチ患者さんは痛みや合併症などによる不安や心配な気持ちをお持ちです。当科では「笑顔で挨拶、優しい対応」をモットーに、患者さんの気持ちをできる限り和らげるようなコミュニケーションを心がけています。
また、大きな病院に通う患者さんの中には、遠方にお住まいの方が少なくありませんが、栃木県では病診連携が進んでおり、普段は最寄りのかかりつけ医で関節リウマチの治療を受けることが可能で、大病院には半年に1度程度の通院と負担が軽くなっています。
風邪などの感染症はこじらせる前に受診を
関節リウマチでは免疫を抑制する薬による治療が中心となるため、感染症への対策が大切です。風邪はこじらせると肺炎に移行し重症化する恐れがあります。症状が悪化する前に受診することが大切です。
膀胱に細菌が感染することで起こる膀胱炎などの尿路感染症も、女性の患者さんに起こることがあります。排尿時の痛みや残尿感、頻尿などの症状があれば早めに主治医に伝えてください。
肺の合併症に留意し、禁煙に努める
高齢の関節リウマチ患者さんでは肺に合併症を抱えている場合があります。生物学的製剤の中には結核を再燃しやすくするものもあるので、血液検査やX線検査、CT検査などで結核感染を調べていただきたいと思います。結核感染のリスクがあっても、抗結核薬を予防投与することで結核の発症を防ぎながら関節リウマチの治療を行えます。
また、関節リウマチは肺の炎症や線維化によって呼吸がうまくできなくなる間質性肺炎や慢性気管支炎を合併しやすいとも言われています。喫煙習慣があると、これらの合併症を引き起こすリスクがさらに高まります。喫煙は関節リウマチの重症化にも関与しますので、禁煙することが望ましいでしょう。
身体を適度に動かし、関節の可動域を維持する
関節リウマチでは、動かないでいると関節が硬くなり、筋力が低下し、動作が制限されていきます。日ごろから身体を動かして関節の可動域を保ち、筋力を維持しましょう。ただし、やりすぎは逆効果です。力仕事や、運動後に痛みが増したり翌日まで痛みが残るような運動は避けてください。
関節リウマチの治療は、ご家族や周囲の方から病気の理解や精神的なサポートを得ることでさらにスムーズに進みます。力仕事が必要な時は周囲の方が手助けをしていただきたいですし、高齢患者さんでは薬の飲み忘れや飲み違いがないよう服薬管理にも気を配っていただきたいと思います。
生物学的製剤やJAK阻害薬の登場によって関節破壊の進展が抑制され、関節リウマチ患者さんも健常人と同様の生活が送れる時代となりつつあります。将来、根本的な治療法が開発され、治癒することが可能になるかもしれません。患者さんには希望を持って前向きに治療に臨んでいただきたいと思います。
参考文献
1) Kato E. et al.: Int J Rheum Dis. 2017 ;20(7):839-845.
佐藤 浩二郎 先生
1995年東京大学医学部卒業。1998年同大大学院(病因・病理学分野)に進学し、2002年修了(医学博士)。同年同大医学部附属病院アレルギーリウマチ内科医員。2003年東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科助手。2006年埼玉医科大学リウマチ膠原病科講師。2014年同科准教授。2019年より自治医科大学内科学講座アレルギー膠原病学部門教授。
自治医科大学附属病院
病床数:1,132床
所在地:栃木県下野市薬師寺3311-1