先生からのメッセージ

手術は無理と思い込まず、まずは主治医に相談を

  • 兵庫県立加古川医療センター
  • リウマチ膠原病センター次長兼リウマチ科部長・整形外科部長
Nakagawa Natsuko
中川夏子先生

多職種が連携してリウマチ医療に取り組む

 大学のテニス部の先輩女性医師からの「整形外科には手の外科という分野があり女性に向いている」というご意見をいただいたこともあり整形外科に入局、現在はリウマチの手の外科の治療に取り組んでいます。

 当センターでは、医師のみならず多職種が連携したチーム医療を行っており、看護師や薬剤師が処方薬や注射薬の詳しい説明(または治療薬の説明)をするほか、作業療法士は手の変形や痛みの抑制、術後訓練のための装具をオーダーメイドで作ったり、フットケア専門の看護師が足の状態を診たり、足の変形に悩む患者さんに対応したりしています。

中川夏子先生

患者さんの日常の悩みに寄り添って手術を検討

 関節リウマチの薬物治療が進歩しても、まだ手指や足の変形の問題は残っており、私は、整形外科医としてリウマチ患者さんの手や足の手術に携わっています。

 関節リウマチの症状としては、手の指が流れるように小指側に傾く「尺側偏位」や第2関節が曲がった状態となる「ボタン穴変形」、第2関節が逆にそりかえった状態となり第1関節が曲がっている「スワンネック変形」などがありますが、症例によっては関節を温存した形成術で、難しければ人工関節を用いて矯正してきれいにできます。また、手指の変形によってお化粧がしづらいなど日常生活動作の改善にも目を向けて取り組んでいます。

 機能面にはさほど支障がないものの、外見上の悩みを抱えている患者さんも少なくありません。患者さんから「孫に手を見せられず隠してしまう」、「外出をためらいがちになる」といった悩みを打ち明けられたこともあり、患者さんの気持ちに寄り添った形で手術を検討しています。

 患者さんは悩みを持っているものの、解決できないと思い込んで、あえて主治医に打ち明けない、打ち明けられないこともあるかと思います。例えば病状が進み、手足が変形して固まってしまい手術は無理と考えている患者さんに「手術は可能」と伝えると本当に驚いていました。医療技術は日進月歩していますので、いろいろできることが増えています。ためらわずどんどん主治医に悩みを打ち明けてほしいです。

女性患者にはライフイベントを考慮した治療計画を提案

 関節リウマチの発症は、30〜40歳代にも多く、20歳代の若さで発症する方もかなりみられます。特に女性では、妊娠や出産可能な年齢におけるリウマチ治療はとても重要となります。当初より主治医と相談し、病気の活動性を十分にコントロールした安定した状態で妊娠することが大切です。治療を先延ばしにして妊娠を待つのは好ましくないとされており、主治医とのコミュニケーションが必要です。

中川夏子先生

装具の活用や家族のサポートにより日常生活を快適に

 関節リウマチ患者さんの関節を守り、変形を予防するという意味では生活動作をサポートする自助具を上手に活用することもよいでしょう。物を掴むリーチャーは可動域を補い、手の代わりとなり活躍してくれる道具です。備えておくと、いろいろな場面で助かります。台所の作業では指先を使う動作が多く、関節に負担がかかるので、レバーハンドル式の水道栓やガスのつまみ栓ひねり、瓶の蓋開け器、スライサーなどご自身の使い勝手の良い物を試してみるのもおすすめです。

 患者さんを間近でみているご家族のサポートも重要です。患者さんの多くは自分のつらさを周囲から理解してもらえないことに悩んでいます。やはりご家族の理解が一番で、それが治療にも好影響を与えます。

中川夏子先生

中川 夏子

1985年神戸大学医学部卒業、同大学整形外科に入局。大学院に進み、博士号取得ののち神戸労災病院、国立加古川病院、甲南加古川病院診療部長などに勤務。2009年度日欧リウマチ交換派遣医制度交換派遣医(ERASS traveling fellow)。2016年より兵庫県立加古川医療センターリウマチ科・整形外科部長、リウマチ膠原病センター部長(2020年よりリウマチ膠原病センター次長)。

兵庫県立加古川医療センター

病床数:353床
所在地:兵庫県加古川市神野町神野203

取材:2022年
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